株式会社トヨタエンタプライズ

第1回:トヨタ流研修の目的とは?講師が詳しく解説

カテゴリー:

仕事の形(カタ)

キーワード:

DX研修価値創造問題解決心理的安全性課題解決

2023.11.01

トヨタが今まで培ってきた仕事の進め方をまとめた「トヨタ流仕事の形(カタ)」が研修として誕生しました。新入社員から管理職まで、一丸となって成功に向けて進む方法を提供しています。
研修内容について、開発者の藤原講師の声をインタビュー形式でお届けいたします。

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

【新作研修】トヨタ流仕事の形(カタ)研修は、トヨタ流の問題解決研修とどう違うのですか?

藤原:一言で言うと、トヨタ流仕事の形(カタ)研修は使う場面が格段に多いということです。トヨタと言えば問題解決の8ステップが有名で、自ら問題に気づいて解決し続ける社員を生み出し、組織を日々進化させています。もちろん問題解決の考え方や手法などは非常に重要かつ有益ですが、それだけでは仕事はできません。特に最近は目の前の問題を解決すること以外の仕事も多くなってきていますよね。

トヨタ流の問題解決では要因解析、いわゆる「なぜなぜ分析」が重要ですが、何か新しいことをやる、従来から大きく変えるといった企画的な仕事では新しいアイデアが必要になる場面が多くなります。トヨタでは「問題解決」や「自工程完結」など仕事の仕方を形式知化し全社教育も行っていますが、一方で、実は「課題解決」や「価値創造」といった仕事の仕方は依然暗黙知になっているものが多く存在していることに気づきました。でもトヨタ自動車をはじめとするトヨタグループで働く人たちに共通する考え方、特に仕事のできる人がやっている考え方、いわゆるトヨタ流は確実に存在します。今回はこれらを見える化し、研修として多くの方にお伝えできるようにしました。また、2024年始のリリースを目指して、仕事の形(カタ)と問題解決の基本を一日間で学べる、新たな研修プログラムも現在開発中です。

「仕事の進め方」や「段取り」を学ぶ研修は他の研修会社にもありますが、「トヨタ流仕事の形(カタ)研修」の特徴は何ですか?

藤原:トヨタのDNAと言われているTPS(トヨタ生産方式)やTQM(総合的質管理)の考え方に基づいて、仕事をうまく進めるための視点や手順が盛り込まれているところが、研修の最大の特徴なんです。

これらのDNAは元々ものづくりの領域で生まれましたが、それを製造部門以外のスタッフの仕事に適用できるように改良しました、というと聞こえがいいのですが、本当のところは製造部門以外でも、トヨタの人はある程度自然にやっていました。ですが、先ほどお話したようにその多くが暗黙知だったんです。

例えばTPS(トヨタ生産方式)の考え方の柱である「JIT(ジャスト・イン・タイム)」は、各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産すること。そのために「ムダ・ムラ・ムリの排除」「改善」「源流(発生源)対策」「標準化」「考える人づくり」などが行われるのですが、生産ラインと製造部門以外のスタッフの仕事では全く同じではないですよね。生産ラインでは仕事の目的と目標、作るものは明確です。一方で製造部門以外のスタッフはそこから考えないといけない。目的ってどうやって考えたらいいのか?私も教えてもらったことはありません。目的を間違えればそれこそムダになります。製造部門以外のスタッフの仕事ならではのことが他にもたくさんあります。そこで仕事のいろいろなシーンにおいて、具体的に何を考えればよいのか?何をすればよいのか?を徹底的に見える化したもの、それが「トヨタ流仕事の形(カタ)」です。

トヨタ出身の役員からは「仕事の形(カタ)の内容って当たり前のことだよね?」と言われたこともあります。役員にとっては当たり前でも、私と同じように当たり前ではない!と思った方も多いのではないでしょうか(笑)

製造業や製造現場以外の職種でも、研修効果はあるのでしょうか?

藤原:もちろんです。これまでの研修の実績から放送業や官公庁など製造業に限らず幅広い業種の方々に、「これは使える!」「もっと早く知りたかった」と言っていただいています。仕事を上手に進めるためのコツって共通要素が多いんですよね。私自身もこのことに早く気づいていれば、もっとお客様や組織に貢献できたのにと少し残念に思っています。

ビジネススキル系の研修を受講しても、自業務における実践につながらないイメージがあるのですが…

藤原:「研修で学んだことを実際の仕事のどの場面でどのように活かすのか?というイメージがわきにくいこと」ってありませんか?これが一番の理由だと思っています。一般的に社員研修では「コミュニケーション」や「ロジカルシンキング」「リスクマネジメント」など特定の領域に絞ったものが多いと感じています。それぞれの講師の得意分野の研修になっているんですよね。でも実際の仕事の場面では、それらを複合的に使わないといけない。学んだものが頭の中でつながらないんです。かつての私がまさにそれでした。

ここを何とかしたいと考えたのが、仕事の軸です。仕事の基本プロセス、いわゆる手順って何だろう?やっぱりPDCAじゃないのか?ということです。PDCAはもう古いと言われることもありますが、基本はやっぱりPDCAだと思っています。環境変化の激しい時代、PDCAサイクルを回すスピード感がこれまで以上に求められているんだと思います。

私はアクションRPGというジャンルのゲームが好きですが、まずはP、大きく攻略法を考えて戦う、でも相手も臨機応変に攻撃してくる。そこで小さなPDCAを素早く回して修正していく、実際の仕事もこんな感じじゃないでしょうか?まさにスピーディにPDCAサイクルを回さないと一向に進んで行けません。なんと6ヶ月間ゲームをクリアできず、負け続けたってこともあります(笑)。

「仕事の形(カタ)研修」ではもうひとつ工夫しています。研修の中に演習があるのですが、講師から提供するケースではなく、受講者ご自身の仕事をテーマに取り上げていただくことで、そのまま持ち帰って仕事に活かせるようにしました。

自社でも既にカイゼンや問題解決に取り組んでいますが、組織全体への浸透が課題です。おすすめの研修プログラムはありますか?

藤原:研修自体を目的化するのではなく、「実際の仕事を進めるために、研修を手段として活用する」という進め方が一番重要です。例えば受講者自身が重点テーマを決め、それを実践するために研修を行うといった進め方をすれば、おのずと成果につながります。

研修としては重点テーマの内容に即したものを選択する必要があります。そこでニーズに応じて最適なプログラムにカスタマイズさせていただいていますが、そこで新たな仕事の形(カタ)のツールが生まれることも多々あります。

あわせて上司に適切な指導をしていただくためにも、組織全体で研修の内容を理解していただくことも重要です。いわゆる共通言語化するということですね。

「トヨタ流仕事の形(カタ)」の理解が深まる、おすすめの書籍はありますか?

藤原:2023年12月に日科技連出版社から関連書籍を発刊しました。トヨタのDXの取組みと心理的安全性、そして仕事の形(カタ)について説明しています。一見関係がなさそうに見えますが、実はお互いに密につながっているんです。

トヨタ流DXを支える心理的安全性と仕事のスピードアップを実現する 2つのカタ: 若手に響く「ものの言いカタ」と「仕事の進めカタ」 | 藤原 愼太郎 |本 | 通販 | Amazon

ホームページには、新作研修【トヨタ流】仕事の形(カタ)シリーズの「基本実践編(段取り・実行のカタ)」、「応用実践編(改革のカタ:課題解決ステップ)」、「価値創造実践編(革新のカタ:価値創造型事業(商品)企画ステップ)」など様々な研修が掲載されています。それぞれどう違うのですか?

藤原:一言で言うと使う目的が違います。基本実践編は最も使う頻度が高く、すべてのカタの基本となる「段取り・実行のカタ」、普段の仕事の多くにこのカタが使えます。

応用実践編は「段取り・実行のカタ」をベースに、全社的な課題など高い目標に向けて取り組むテーマを対象とした「改革のカタ」。そして価値創造実践編は、その名の通り新商品・新サービス・新規事業を考えるための「革新のカタ」です。

これに従来からあった「問題解決ステップ(改善のカタ)」を加えた4つのカタで、かなりの仕事の範囲をカバーできると思っています。

第2回コラムでは「基本実践編(段取り・実行の形)」の研修内容と、研修で使用するツールについて詳しく解説します。※第3回は「応用実践編」、第4回は「価値創造実践編」の解説を予定しています。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。
まずはお気軽にお問合せください。

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