第10回:「早期成長」で「新人の離職」に歯止めをかける!新作研修『新入社員のための改善基礎研修』導入のメリットとは?

PROFILE
藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう

国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。先回のコラムでは新入社員の皆さんに向けた、新たな研修『新入社員のための改善基礎研修』解説その1として、なぜ、新人に「トヨタ流研修」 が効くのか? を探りながら、仕事の「目的」を理解する重要性をご説明しました。
今回は、もう1歩先に進んで考えてみたいと思います。

この『新入社員のための改善基礎研修』は『問題解決研修』や『業務効率化研修』の基礎となるものですが、私は従来から研修を行う側として、新入社員から経営層までそれぞれの立場で受講できる、一貫性のある研修プログラムがあればより効果的だと考えていました。というのも、企業研修には各社から実にさまざま種類の研修が提案されていますが、同じような目的に見える研修でも内容は似て非なるもの。類似していても「価値観」や「プロセス」などに一貫性があるわけではなく、あらゆる研修からランダムに受講することは、逆に混乱を招く可能性があると感じていたからです。

「あるべき姿」を目指し「全員で改善・改革」を進めることは、企業の成長には必須ですが、「あるべき姿」を目指すために複数の「研修」を加えるとき、その研修に一貫性があることで、より簡潔で効率的に「あるべき姿」に到達すると私は考えます。

今回『新入社員のための改善基礎研修』がラインナップに加わったことで、「トヨタ流研修」の、新入社員から経営層まですべての階層における研修体系が完成しました。それぞれの研修は業種・業態に限らず、どんな企業でも取り入れることができます。

このHP内にも新たに「トヨタ流研修体系図」が公開されましたので、ぜひご覧ください。

ところで皆さんは、新入社員にどんな人材に育ってほしいと考え、研修導入を考えていらっしゃるのでしょうか。
私のところには新入社員に対する、こんな悩みや相談が多く舞い込みます。
「指示したことはできるが、それ以上のことができない者が多い。自ら問題に気づき考動できる人材に育てたいが、どんな教育がよいか」「与えられた業務に対して深く掘り下げて考え、結果を出せる人材に育成したい」

『新入社員のための改善基礎研修』はまさにこうした問題を解決するための研修で、トヨタ流研修全体のテーマである「自ら問題に気づき」「考え」「変えていく力」を養う基礎となっています。

この考えの根本にあるのが「トヨタ生産方式/TPS(Toyota Production System)」。研修では、実践を通して自分の業務の「ムダ」「ムラ」「ムリ」を見つける視点や、「やめる」「へらす」「かえる」といったトヨタ生産方式(TPS)独自の視点を学び、自らの業務で即・実践することを目的としています。

皆さんもご存じの通り、トヨタがここまで大きく成長した大きな要因の一つは、トヨタ生産方式(TPS)による「カイゼン」の文化です。
トヨタは改善事例発表会や創意くふうなど、カイゼンにつながる仕組みを複合的に構築し、世界的な地位を確立しましたが、今もなお常に進化を求めています。
これと一緒とは言わないまでも、重要なのは「カイゼンすることが当たり前」の文化を、会社全体に醸成することです。

『新入社員のための改善基礎研修』では、「カイゼンすることが当たり前」であること、そして「カイゼンマインドを持つこと」が問題解決につながるのはもちろん、お客様へのプラスの影響だけでなく、自分自身や仲間の成長につながり、「そこに嬉しさ・喜びがある」という考え方を理解し、自分の仕事で実践できるよう学んでいきます。

私の新人時代のことですが、上司にこう教えられたことがあります。
「部下に3つ改善策を出されたとして、一つでもはじめからダメ出しをする上司はうまく部下を育てられない」
上司はその言葉通り、私が提案する改善策を全て受け入れくれました。
今考えれば、足りない点も多くありましたが、改善の「達成体験」は「承認欲求」を満たし、また仕事の「やりがい」にもつながり、私が大きく成長するきっかけになりました。「嬉しさ・喜び」を感じた訳です。では、『新入社員のための改善基礎研修』を通じて「改善の嬉しさ・喜び」を初期から体感することで、新入社員にはどんな力が身につき、変化が見られるのでしょうか。

①自ら問題を発見し、行動する力が身につく

・言われたことだけをやるのではなく、「なぜこの作業があるのか」「もっと良くできないか」と考えられるようになる
・自律的に業務を見直す力や、改善提案力が育つ。また、現場での信頼を早期から得やすくなる

➁小さな改善の積み重ねの価値を理解できるようになる

・「完璧な成果を出す」よりも「まずやってみて、少しずつ良くする」マインドにシフトできるようになる
・失敗を恐れずに行動でき、PDCAサイクルを回す習慣が身につく

③チームでの改善・協働意識が高まる

・個人ではなく「みんなでより良くする」文化に自然と順応できるようになる。
・コミュニケーション能力や巻き込み力が育ち、組織の中で協調して働けるようになる。

④問題に対して前向きな姿勢が定着する

・「問題=悪いこと」ではなく、「問題=改善のチャンス」と捉えられるようになる
・変化を恐れず、柔軟かつ前向きに課題に取り組む姿勢が身につく

『新入社員のための改善基礎研修』は、新入社員の皆さんだけで受講してもよいのですが、職場の直属の上司や先輩と一緒に受けるのも効果的だと考えています。上司や先輩は、自分が無意識に行っている「改善」を再認識できますし、また指示の「言語化」の重要性を改めて認識することもできると思います。

ここまでは会社側の視点に立って書いてきましたが、ここからは少し新入社員や就活生の視点で考えてみたいと思います。
先ほど、あなたに「新入社員にどんな人材に育って欲しいか?」という希望をお聞きしましたが、新入社員や就活生の立場になって考えるとどうでしょう。彼らはどんな会社を求めているでしょうか。
デジタルネイティブの時代に育ったZ世代の若者は、私たちが考えるよりずっとスキルアップに意欲的な人が多く、「この会社は果たして自分を成長させてくれるか?」「やりがいのある仕事をできる環境か」という点を、しっかりと見ています。
また残念ながらZ世代の離職率は高く、厚生労働省が令和6年に発表した新規大学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業)では、就職後3年以内の離職率は34.9%にものぼり、過去15年間で最も高い離職率となりました。
その離職理由のトップの一つとして「会社で自己成長を望めない」が挙がっています。『新入社員のための改善基礎研修』では、入社当初からトヨタ流の「改善の視点」のを理解することで、「仕事をよりよく、効率的に変化させる人」へと早期に成長させることができますが、これは、企業にとっても、スキルアップを求めるZ世代の若者にとっても非常に大きなメリットとなるはずです。

〈出典〉厚生労働省ウェブサイト
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html

もう一つ、「改善の視点」を理解する重要さは、今後のAI活用にも大きくつながっています。 いま世の中はAI活用の大転換期にあり、今後AIによる業務効率化が急速に進むはずです。しかしAIは使う人の能力次第であることは間違いなく、AIなどデジタル技術による業務効率化を進めるためにも、「改善・改革」の考え方やプロセス・手順を理解する社員を育成することは重要で、この研修はそうした意味でも有意義だと私は考えています。

最後に、いただいた質問にお答えして今回のコラムを終わりにしたいと思います。

A. 内定者から1~2年次の方を対象とした新入社員向け研修としておすすめします。中途採用の方や、3年目以降の方は仕事での経験が大きく異なるため、『仕事のカタ研修』や『業務効率化研修』がおすすめです。


A. どんな人でも、日常生活において何らかの改善はしているはずです。とくに就活では面接等で、学生時代に力を入れた「ガクチカ」や研究における改善内容について聞かれることも多く、改善に対する考え方自体は身についていると思いますので、本プログラムは全く問題なく理解していただける内容です。

ビジネススキルの一つであるロジカルシンキングは、新入社員研修にも広く取り入れられています。
『新入社員のための改善基礎研修』は、そのロジカルシンキング研修に代わる選択肢として位置づけられるものです。論理的思考を養う点は共通しつつ、日々の小さな業務にも即・当てはめられるのが特長の一つ。トヨタ流の「仕事の目的を問い、改善を積み重ねる姿勢」を考え方の軸とし、業務での実践を見据えているため、職場での即効性と持続的な成長の両立が期待できると思います。

第9回:「手順」ではなく「目的」から教える― 新人教育を変える新作『新入社員のための改善基礎研修』を講師が解説!

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。新年度から半年近くが経過し、新入社員の皆さんも配属先に打ち解け、本格的な業務をスタートされている時期かと思います。今回はそんな新入社員の皆さんに向けた、新たな研修『新入社員のための改善基礎研修について解説したいと思います。

これまで私たちはさまざまな研修を展開する中で、新入社員向けには『社会人としての基礎づくり研修』を用意していました。しかし
「マナー的な研修以外の新入社員向け研修はないか」
「問題解決を会社全体で取り組みたいが、トヨタ流の研修で新入社員向けの前段階的なものがあれば取り入れたい」
「マインドセット研修でトヨタ流があれば知りたい」
などの問い合わせを多くいただき、『新入社員のための改善基礎研修』の開発を決めたという経緯があります。
本コラムでは、『新入社員のための改善基礎研修』について、2回にわたって解説していきます。

ここを読まれている皆さんは、新人研修について悩まれ、このコラムにたどりつかれている方がほとんどだと思います。
皆さんは、こんな悩みや疑問をお持ちではないでしょうか。

  • 新入社員の研修や教育にはどんな内容が最適なのか、わからない
  • そもそも、新入社員への教え方がよくわからない
  • 若手の先輩社員が後輩を上手く指導できない
  • 指示したことはできるが、それ以上のことができない者が多い
  • 自ら問題に気づき考動できる人材に育てたいが、どんな教育がよいか
  • 新入社員や若手の離職を減らしたいが、どうしていいかわからない

実はこのトヨタ流「新入社員のための改善基礎研修」には、その答えを紐解くカギがぎっしり詰まっています。その内容を少し、本コラムではご紹介したいと思います。

皆さんの会社では新入社員に、どんな順序で仕事を覚えていってもらっているでしょうか。

マナー研修で社会人としてのマナーをまず、身につけてもらう。
       ↓ 
OJTで会社のルールとともに簡単な業務手順を覚えてもらい、ある程度できるようになってから順次仕事をステップアップさせていく。

このような流れで教育している、という企業は多いのではないでしょうか。確かにこれは間違いではありません。

しかし、世の中の価値観はこの10年だけでも大きく変化し、それとともに若い世代の「働き方」や「生き方」に対する考え方もガラリと変わりました
私が教えている学生たちもそうですが、若い世代は「コスパ」や「タイパ」に非常にシビアであると同時に、「自分がいかに成長できるか」そして「自分が社会に何か貢献できているか」を、私たちが想像する以上に気に掛けています
情報収集能力も高い彼らはSNSなどのインターネットの情報を通じて、自分の費やした時間を「コスパ」や「タイパ」として評価し、自分にとってパフォーマンスが低いものは、あっさり切り捨ててしまう傾向にあります。会社の離職率が高まっている要因の一つもここにあります。
こうした状況下における現代の新入社員にも、実は「トヨタ流」の仕事の進め方や考え方は有効的で、効果を発揮します。

それはなぜか—。その理由の一つが、仕事に対する目的の理解です。

トヨタ流では、仕事は「手順」から覚えてもらうのではなく、「この仕事は誰のためなのか?」「この仕事は何のためなのか?」と、仕事の「目的」をしっかり理解するところからスタートします。

仕事への深い理解は仕事の習得を早めるだけでなく、仕事のモチベーションアップにも直結します。また、仕事に対する正しい理解とモチベーションアップは「自ら考える力」となり、それが小さくても「承認」という結果につながると、好循環が生まれ、仕事のやりがいや、嬉しさにつながっていくのです。

トヨタ流において、仕事の「目的」の理解は、仕事の基本中の基本です。

「トヨタ生産方式/TPS(Toyota Production System)」でも「仕事の目的を考える」ことは 基本的な思考方法やマインドセットの一つとして位置づけられ、入社した早期から「目的」を意識して仕事ができるように習慣化することで、本人はもちろん、トヨタ全体に大きなメリットを与えてきました。
社員一人ひとりが自分の仕事の目的を明確に理解して業務に取り組むことで、全体の生産効率は向上し、それは価値連鎖へとつながります。もちろん、会社への信頼感や帰属意識も強化されます。

そう、トヨタ流の考え方は、そもそも自分の仕事をどう理解するか、というところから始まっているのです。

次に、「目的」を考えて仕事をした場合の好事例をご紹介します。以前、私が他所で耳にした事例なのですが、物販店でのわかりやすいケースで、仕事の目的を理解することの重要性がよく伝わる内容です。

全国展開する物販店では、アルバイトの定着率が低かったそうです。
陳列マニュアルが細かく、覚えるのが大変で、ルールから外れるとすぐ指摘される環境だったとのこと。そこで「陳列の目的=お客様に商品の魅力を伝えること」と捉え直し、独自のアイデア陳列を許可した結果、アルバイトが工夫を競い、売上と定着率が改善したといいます。

まさにこの事例の成功点は、トヨタの考える仕事の基本と同じ、「目的」の理解です。
この事例でわかるように、「目的」を理解せず、方法やツールばかりを重視する「手段」のみで仕事を進めても仕事は思うような方向には進みません。
また、仕事ではどういう状態が「ゴール」かを定め、そこにプロセスを組み立てることが必要ですが、それを考えず「今目の前にある、やらなければいけないこと」だけをやっていては成功にはつながりません。

この『新入社員のための改善基礎研修』では、すぐに研修内容を仕事に生かせるのもポイントの一つですが、研修では仕事の「目的」を理解するための考え方を学び、即応用できるよう、自分事としての演習も行っています。

では、仕事の「目的」を考えるとき、どこに軸足を置いて考えるのが重要なのでしょうか。その答えを、トヨタでは「お客様視点で仕事の目的を考えることが重要」だとしています。
しかし、単に「お客様」といっても、トヨタが定義する「お客様」は目の前の客のことではありません。

「トヨタの指すお客様=自分の仕事における価値の提供先」のこと。エンドユーザーはもちろん、後工程に加え、さらにはステークホルダーまでを全てがお客様だと定義しています。

トヨタは1960年代にTPSの考え方を確立させたとき、生産現場で「後工程はお客様である」という考え方を打ち出しました。同じ社内であっても「後工程はお客様」という訳です。 
後工程の「お客様」がスムーズに仕事ができるよう、常に考え・改善するようにしたことで、トヨタは品質の向上とともに、生産性を格段に向上させてきました。
このTPSの初期の考え方をさらに拡大させたのが、先ほど説明した「お客様視点で仕事の目的を考えることが重要」だという訳です。

下のイラストは、新入社員が早期から「自分の仕事の目的は車を販売することではなく、お客様の安全で快適なカーライフをサポートすることだ」と気づき、改善マインドを持つことでモチベーションの向上と自己成長につながった、というトヨタ販売店様の一例です。

私たちを取り巻く社会環境の変化スピードはますます速まっています。こうした環境の変化が激しい中では、企業の中の一人ひとりが仕事の目的を考えて自ら動くことが必至となりますが、その大前提が、仕事の目的を知るということなのです。

今回のコラムのはじめに、現代の若い世代は「自分がいかに成長できるか」そして「自分が社会に何か貢献できているか」を重視していると書きましたが、『新入社員のための改善基礎研修』では、「自分の仕事の目的を理解する」ことで、「それぞれの立場の人にどんなメリットを生み出すか」を考える演習も行い、仕事の本質にまで切り込みます。
それを理解した上で、「改善マインド」を育成するための内容へと進んでいきます。

最後に、今回の解説のまとめとして、『新入社員のための改善基礎研修』で学ぶ、トヨタ流 仕事の基本を理解することで、新入社員がどんなスキルを習得できるかをご紹介しましょう。

①仕事の習得が早くなる
②自分の仕事が社会にどう貢献しているのかまで理解でき、仕事のモチベーションがアップする
③後工程を含めたお客様(価値の提供先)に対してより良いアウトプットを提供できるようになる
④仕事の目的に合わないムダを発見できるようになる
⑤目的を達成するためにより良い仕事の仕方・手法も考えることができるようになる

上記のスキルを習得することは、社内での小さな承認の積み重ねにもつながり、さらに仕事のやる気、そして仕事の嬉しさにつなげることができます。

『新入社員のための改善基礎研修』は「新入社員」と名が付いていますが、先輩の立場の若手社員が仕事の目的を理解していない場合や、新入社員への教え方に悩む若手の先輩社員にもおすすめです。こうした社員は、それまでの仕事を振り返ることができるだけでなく、後輩への指導の仕方も理解できると思います。また製造業以外の職種の受講はもちろん、製造と事務系など、全く違う部署同士で受講するパターンも可能です。気になる方は、ぜひお問い合わせください。

次回は、「新入社員は指示されたことしかできない。それ以上の結果を残せる人材に育って欲しい」などの悩みに『新入社員のための改善基礎研修』がどう応えるのか?
そして新入社員の考える力や、カイゼンマインドをどう養うのか、などについて解説します。10月上旬に公開予定です、ぜひお楽しみに!

対症療法ではなく原因療法を。トヨタ流研修を提案する若手営業社員の思い

トヨタ流研修をはじめさまざまな研修の提案営業を行っているトヨタエンタプライズ広域営業部の若手社員インタビューです。研修のメリットや導入事例について聞きました。

「人材育成やキャリア支援のために社員研修を行っても、社員はやらされ感があり、なおかつ成果も出ない…」とお悩みの人事担当者の方もいることでしょう。もしかすると「今抱えている問題を解決するために、どういった研修が必要なのか」について、今一度問い直してみるのが良いのかもしれません。根本から問題を解決したいお客様には、トヨタ流の考え方を活かした社員研修をおすすめします。
この記事では、実際にトヨタ流研修をはじめとしたさまざまな研修の提案営業を行う若手社員の二人に、研修のメリットや導入の成果などについて話を聞きました。

<プロフィール>
S.Tさん(広域営業部 営業室 営業グループ)
2023年度新卒入社。趣味はバスケットボール観戦。
Y.Oさん(広域営業部 営業室 営業グループ)
2023年度中途入社。趣味は卓球、ロードバイク、ランニングなど

「お客様と課題に向き合って伴走しながら、どのような層を対象に研修していくのかについてしっかりとご提案できたことは、とても印象に残っています」とS.Tさん(以下Tさん)はさわやかな笑顔で語ります。
彼は、2023年度新卒入社の社員。みずからを「ポジティブであきらめない人間」だと評します。バスケットボールなどのチームスポーツに長く取り組み、チーム一丸で奮闘する経験を積んできたこともあって、社会人になってからは、人の役に立ちたいとの想いがいっそう強まったとのこと。
入社して数年経ち、後輩社員の育成も求められていることに強い責任感を持って自走している様子。そうはいいながらも社内外で何かと愛される(イジられる?)、天性の愛されキャラです。

一方、「お客様からは、今まで考えてなかった自組織の課題について目を向けることができた、という感謝のお言葉をいただきました。『聞くだけでなく、受講者に考えさせる研修なのがすごく良かった』とも」と嬉しそうに話すのは、同じ部署のY.Oさん(以下Oさん)。
2年前に中途入社した彼女も、体を動かすことが大好きです。卓球の社会人クラブチームに所属し、毎週のように練習や試合に精を出しているのだとか。トヨタグループの駅伝大会にも参加しているというスポーツウーマンは「雑草のように粘り強い人間だといわれます。ガッツだけはあります」と、話しぶりから謙虚で真面目そうな一面が垣間見えました。
また、推しのアイドルの話をしはじめると止まらないところに、彼女の「誰かを支えたい気持ち」の強さが表れています。

トヨタ流問題解決では、「現状」と「あるべき姿」のギャップを「問題」と捉えます。
「お客様は何かしらの問題を解決したいから、問い合わせくださっています。だからこそ、こちらが『この研修を』と思い込みや決めつけで、一方的に提案してしまわないようにしたい。お客様のお悩みをしっかりとヒアリングして一緒に課題に取り組むよう、傾聴のスタンスを心掛けています」(Oさん)

では、彼らのような営業社員が考える、トヨタ流研修の強みとは何なのでしょうか?
Tさんは「トヨタで実際に現場を見てきたOBを中心とした講師と、トヨタ製造現場の考え方を事務系などさまざまな仕事に活かしていただける実践的なカリキュラムや演習」を挙げます。
Oさんも「研修の成果というのは、客観的にわかりにくいと思う」とした上で「トヨタ流研修はトヨタの現場で実際に行われている考え方を活かした内容なので、説得力がある」と力強く語りました。
とはいえ、奥が深いのがトヨタ流研修。二人も「自分たちも日々、カイゼンの気持ちを忘れずに取り組んでいる」のだそう。「自分自身が知識として理解したと思うことは多いのですが、問題解決の8ステップひとつにしても、お客様に表面的に説明するのではなく理解してもらおうとすると、一筋縄ではいかないです」と告白するTさんに、Oさんもこう賛同します。
「お客様に魅力を感じてもらうためには、自分もわかったつもりではなく、もっと深いところで理解していかなければ…」
彼らはまだまだ、現状に満足していません。自分たちのトヨタ流研修の強みの伝え方には、カイゼンできる余地があるのだと――。
そう、自分自身の課題について「なぜ?どうして?」と問い続け、PDCAを回す習慣が身に付いているようです。

実際にトヨタ流研修を導入したお客様には、どのような反響や効果があったのかも気になるところです。
数十社を担当するTさんは、ある製造業のお客様から相談を受けたときのことを振り返ります。「課長クラスの方からのお問い合わせで、『経営層が会社全体の問題解決能力に悩みを抱えている』とご相談をいただきました」それまでは自社で社員研修に取り組んでいたものの、職層ごとにスポットで行っていたため、効果が表れにくかったとのこと。
対症療法的にではなく、お客様が抱えている問題の原因を発見し、解決したいと感じました。社員の共通言語としての問題解決の考え方を学びたいとのことだったので、問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~を提案し、100名ぐらいの管理職の方々に受けていただきました」
研修後、社会人の大ベテランである管理職の方々に「ここまで深く問題解決の考え方について学べて良かった。今後は学んだことを実務に落とし込んだり、自分のチームの部下に教えたりするためにしっかり復習する」と言ってもらえたと、Tさんは嬉しそうに語ります。

Oさんも「社員の業務量が多く、残業時間が増えているのが悩み」とお客様から相談を受け、トヨタ流研修を提案しました。当初は希望者のみの受講だったのが「自分の普段の業務に落とし込んで、グループで考えて議論する演習」などの内容を高く評価され、「他の職層、特に若い社員全員にも受けてもらうべきだ」となり、毎年の定期開催が決まったのだとか。

なぜトヨタ流研修が評価されるのか。それは「即座に実務に活かせる」という受講者のメリットがはっきりしているからなのは、もちろん言うまでもないでしょう。
それに加えて「なぜ、この研修が必要なのか?」という目的意識が、二人のような営業社員とお客様との間で、しっかりと共有されているからなのかもしれません。

Oさんはいいます。「『社員の成長のために研修を実施したい』という会社側の想いと『忙しい業務スケジュールの中で、さらに研修を受講しなければならない』という受講者側の想い、この双方の認識が食い違ってしまうのが一番もったいない」と。
「だから、会社としても『会社は社員の皆さんにこれぐらい期待しています、だからこの研修を受けてもらっているのです』と受講者に意図や目的を理解してもらえば、受講者の皆さんも『自分もこんなに期待されているのなら、もっとがんばらなきゃ』と前向きに取り組んでくれるんじゃないかと。…そんなマインドがもっと浸透すればいいなと思っています」(Oさん)

二人は、多くの社員研修が対症療法的に行われてしまっていることを危惧しています。だからこそ彼らはトヨタ流の「なぜなぜ分析」を駆使しながら、お客様の組織が抱えている問題の真因を発見して、目的を明確にした研修を提案しているのです。

彼ら若手二人が、お客様から最近よく受ける相談は、「若手社員について」なのだとか。
「最近は『若手社員が受け身で困っているが、何か指導してハラスメント扱いされるのも困る。何をどこまで指導したらいいのかわからない』というお悩みをよく相談されます。若手社員にモチベーションアップ研修を受けてもらうのはもちろん、その若手社員が働きやすい職場環境も重要だと思っているので、職場風土の研修を提案することもあります」(Tさん)

管理職の方々の『若手の育成に課題感がある』というお悩みを深掘りすると、実は上司世代・若手世代、双方のコミュニケーションの問題に行き着くことも。そんなときは、世代間のコミュニケーションを円滑に行うための「モノの言い方や伝え方」の研修などを提案しています。世代間コミュニケーションに関する課題は、私自身も「自分事」として感じる場面があります。上司世代・若手世代双方にとって最善な解決策を、研修でご提案していきたいと思っています」(Oさん)

今は、未曾有の人口減少時代。働き手不足や離職対策のほか、リーダー育成など、人事系のお悩みは決して尽きることがありません。一方で、働き方は多様化し、これまでの経験則がなかなか通用しなくなってきています。彼らは、社会人として大先輩にあたる人事・研修担当の方々が抱えるさまざまな人事的課題に、日々寄り添っています

彼らは、これからどのように成長していきたいと考えているのでしょうか。 「当たり前のこととして、いただいたお悩みの解決のため、最善の提案ができるようにと心掛けています。さらにプラスアルファでお客様に喜んでいただけるよう、まだ言語化されてないこと、表面化してない問題までも汲み取りたいと思っています。人手不足や人材採用・育成についての問題を抱えている人事系のお客様のため、もっとその分野の知識を身に付けていきたい」と、真剣な面持ちで語るOさん。

一方のTさんは「自分は…貫禄を付けたいですね」と茶目っ気のある笑顔でいいます。これは単なる冗談ではなく、心身ともに信頼される人間になり、お客様からもっと頼りにされたい――という彼なりの正直な表現。Tさんは最後に、こう締めくくってくれました。
「どんな問題でも、とにかくまずは相談していただきたいです。問題の真因が明確になっている方々はもちろん、現段階で表面化している問題でも、どんなことに課題感をお持ちか、どのような組織を目指したいか、お話を聞かせてください。お客様と一緒に伴走しながら、背景にある真因を掘り下げて、それに対する最適な解決策を提案していきたいですね」

対症療法的な対策ではなく、そもそもの「目的」と「あるべき姿」にこだわる。その上で、問題を確実に解決する「考え方」を養い、実践していく。それがトヨタ流のカイゼン(問題解決)です。
広域営業部の二人は、これからもさまざまなお客様の問題解決のために、東奔西走していきます。そう、彼ら自身もまた、日々地道なカイゼンに取り組みながら

写真:髙橋学(アニマート)

第8回:新作研修『【7時間研修】業務効率化の上手な進め方』を講師が解説!

〜「トヨタ流 業務効率化」とDXの融合で未来へ!〜

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。今回は25年5月に新しくラインナップに加わったばかりの新作研修【7時間研修】業務効率化の上手な進め方 ~トヨタ生産方式の考え方で、仕事の生産性向上を目指す~』についてお話しします。

もともと業務効率化研修には、トヨタ生産方式の考え方を活用して効率化の具体的な進め方を学ぶ『3時間研修』がありましたが、「考え方を学ぶだけでなく、効率化の定着・継続を目指したい」「日々の業務内で改善意識や仕事の取り組み方を植え付けたい、効率化を会社の風土として浸透させたい」という要望を受け、新に7時間研修をリリースしました。

『7時間研修』は演習を通じて自業務をテーマに実行計画を作り、職場に戻って即・業務効率化を進められる「実践型研修」ですので、特に業務効率化の推進リーダーや、自ら業務内容に合わせて改善案や実行計画を考えたい方におすすめです。

従来の3時間研修では、会社や部署で目指すべき「業務効率化の本当の目的とは何か?」という根本を探りながら「対象業務の選定ポイント」や「効率化するための視点」などを理解していただいていましたが、7時間研修ではそれに加えて、業務効率化の「企画立案の手法」さらに「実行計画づくりのポイント」までを演習を通じて実践的に学んでいきます。
ここでポイントとなるのは、この7時間研修の演習題材には「ケーススタディ」を用いないということ。事例を用いる「ケーススタディ」でも学ぶべき点は多くありますが、実際のところ、それに全てを自分にあてはめようとしてもどうしても無理が出て、思うように実践出来ないという問題が起こりがちです。当たり前ですよね。仕事の種類はもちろん、仕事のバックグラウンドや環境は千差万別ですし、目指すべき姿もそれぞれの形があるでしょう。また目指すべき姿は、より具体化・明確化することこそ重要で、それが目指すべき姿に近づく最短距離だと言っても過言ではありません。

私はトヨタ自動車時代の経験から「研修=即実践できるものであるべき」というポリシーを持っていますが、この研修では特にご自身の業務や職場の業務をテーマにした「自分事の演習」を行うため、現場での業務効率化の即実践につなげていただくことができます。
もう一つの特長として、この研修では質問の書かれたツールを使いながら演習を行っていきますが、このツールは現場で何度でも活かすことができ、こちらも好評をいただいています。例えば研修では冒頭で業務効率化とは? 効率化を行う業務の選定ポイントは? などを学んだ後、自身の問題やテーマに沿って選定した業務の全体像と改善・改革したいことを書き出します。書き出したものは参加者同士で共有するため、ほかの人がどんなテーマを持っているのか、またどんな仕事の進め方をしているのかなどをお互いに知ることができるのもポイントとなります。

ここからは、「トヨタ流」ならではの研修の特長と、それがなぜ今の時代に活かせるのか少し深掘りしたいと思います。本研修は、トヨタ生産方式(TPS)の考え方を活用して業務効率化を計画・実行する研修です。TPSの2本柱ともいえる「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の基本的な考え方に沿いながらも、時代や環境の変化と業種・業態などのニーズに合わせた内容にアレンジされています。

「ジャスト・イン・タイム」が目指すのは、読んで字のごとく、必要なものを必要な時・必要なだけつくること。これは一見、当たり前で単純なことのように思えます。しかし仕事は複雑に絡み合っていることが多く、全ての工程・作業において「ジャスト・イン・タイム」を実現するのは至難の業で、繰り返しの改善・改革が不可欠です。
トヨタにおける自働化は、にんべんのついた「自働化」と呼ばれ、漢字は「自動」ではなく「自働」。単にオートメーション化するという意味ではなく、「異常がわかり・異常で止まる」ことにより不良品をつくらないこと、さらに「人を機械の番人にしない」という意味が込められています。そしてこれを実現するために不変的で重要な考え方となっているのが「ムダ・ムリ・ムラ」の徹底排除です。


「ジャスト・イン・タイム」や「自働化」はもともと製造工場で生まれたものですが、トヨタが世界的に成長した大きな要因となりました。研修ではこの手法を製造現場以外のどんな職種でも使えるよう、「スタッフの頭の中の仕事(全体像や業務プロセス)」の見える化を行いながら、「ムダ・ムラ・ムリ」を見つける視点(改善)や改善・改革したい部分(攻め所)を明確にし、対策を考えるという流れにしています。

この研修に限らず、トヨタ流の研修全般で受ける質問ですが、皆さんが気にされるのは、製造業以外の業種でこの研修を生かすことができるか」という点です。

答えは、もちろん可能です。業務改善研修は製造業以外のサービスや営業・販売・事務系など、幅広い業種に対応できるようアレンジされています。例えば、工程や手順などの「業務プロセス」を見える化することは業務効率化において必須ですが、製造業以外では、工程が「担当者の頭の中」にしかないことも多くあります。研修ではそれをいかに「見える化して共有するか」という手法も学びながら、チームとして議論する演習なども行います。研修では下図のようなステップを踏みながら、改善すべき点の洗い出しを行います。

このほか、「ムダ・ムリ・ムラ」を見つける視点や、対策ヒントなども具体的に解説します。下の図はその一例です。

「業務効率化」の研修に対するリクエストの一つとして「デジタル技術を導入したい」という声も多くいただきます。DX化を喫緊の課題にしている企業も多く、きっと皆さんが気にされている部分でもあると思います。私はDXに代表される最近のデジタル技術は「ジャスト・イン・タイム」や「自働化」を実現するために大変有効な方法だと考えており、研修ではデジタル技術の活用方針や戦略なども学んでいただきます。

さらにここでは詳細まではお見せできませんが、「主なデジタル技術とその活用先」の一覧なども使用しながら、実際の仕事にどんなデジタル技術を活かせるのか、具体的な技術や用途・活用事例もしっかり学んでいただくことができます。

上にも書きましたが、私はデジタル技術の導入と併行して、トヨタ生産方式の考え方や手法を学ぶことは非常に有用だと考えています。というのも、デジタル技術とはいっても結局はそれを使いこなす人材を育てなくては意味がないからです。これはデジタル技術そのものを使いこなすという意味ではなく、業務の工数を削減またはスピードアップさせ、生産性を高めるための業務改善・改革を行うための考え方をしっかり理解・体得し、デジタル技術も駆使して生産性向上、さらには価値創造を実践できる人材につなげられる人材を多く育てるという意味です。トヨタ生産方式(TPS)の考え方とDXの融合では、これまでにないさらなる効率化が大きく期待されています。
長いスパンで考えたとき、今こうした人材を増やすことこそが、企業の未来に大きく左右すると私は考えています。

ここで、研修を受けた方からの声を少し紹介したいと思います。

研修は「自分の職場に持ち帰ったときに、どう使えるか?」という視点の講義や、事例を交えた解説・演習が多く、自分の業務で即実践できた

●実務にすぐ落し込むことのできる内容だった。日々の業務に追われ時間に余裕がない状況だからこそ、トヨタ生産方式(TPS)と目的発想法の考え方を活かして改善改革していきたい

●トヨタで実際に使われているトヨタ生産方式(TPS)の考え方を活用した講義は分かりやすかった。また、実行計画づくりの演習も「仕事のカタ」の要点に添って考えながら進めるので、迷うことなく進めることができた。「仕事のカタ」についても学んでみたいと思った

この研修では業務効率化の実践方法を中心に学びますが、PDCA の具体的な実践方法を身につけるトヨタ流仕事のカタ研修」や、上司や周囲の理解を深められるコミュニケーション力向上(研修はお問い合わせください)なども併せて受講されると、より有効的だと思っています。
私のポリシーは机上の空論で終わらない即・実践できる研修ですが、研修を受けていただく皆さんにとって「ムダ・ムラ・ムリ」のない研修でなければならないとも思っています。
だからこそ、皆さんの貴重な時間を最大限に活かせるよう、今後も「現場で使える」「すぐに実行できる」内容にこだわり続けていきます。
あなたの職場の改善の第一歩として、ぜひ一緒に学んでいきましょう!

第7回:トヨタ流 業務効率化のこだわりは「目的の明確化」。効率化もDX推進も成功させたいなら、「根本」に立ち返れ!

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

企業が持続的な成長をするために「業務効率化」は、必須課題です。しかし、「忙しすぎて業務の効率化に手を付けられない」「業務の効率化の進め方がわからない 」ムダを見つける方法が今一つわからない」「改善・改革のアイデアがなかなか出てこない」「組織で業務の効率化に取り組んだものの、成果が実感できない」と、悩む企業は多いはずです。

藤原:皆さんこんにちは。講師の藤原です。先回のコラムでは、皆さんから質問や相談の多い「問題解決研修」について詳しく解説しましたが、今回解説する「業務効率化研修」も「問題解決研修」同様にご質問や相談の多い研修の一つです。 そこでここでは改めて「トヨタ流の業務効率化」とは?をひも解くとともに、業務効率化の根本的な考え方や「業務効率化研修」と「問題解決研修」の違い、さらに現代の業務効率化には欠かせない「DX推進」の正しい進め方なども解説していきます。

はじめに、「問題解決研修」と「業務効率化研修」の違いから説明しましょう。私も担当しているトヨタ流 問題解決研修」では、まず「何が問題なのか」を明確化することから始めます。その上でその問題の陰にある「見えていない課題」や「表向きの原因とは異なる真因」を発見する方法などを学ぶ訳です。 この際の「問題」とされる対象は幅広く汎用的で、問題解決法を習得することで、社内におけるさまざまな問題に応用することができます。研修は8つのステップに沿って「PDCAサイクル全体」で演習を行いながら進めていくのも特徴です。

これに対して「業務効率化研修」では、すでに問題が「業務を効率化できない」という点に絞られているため、研修もそこに特化し、業務内でのプロセスのムダを見つけ、改善・改革していく、という具体的な手法や考え方を学びます。 PDCAでいえば「P」の部分(問題の発見と計画づくり)に的を絞った内容になります。

「トヨタ流 業務効率化研修」とは何かを説明するにあたり、少し裏話的な内容になりますが、この研修が生まれた背景について少しだけお話したいと思います。

私がかつてトヨタのTQM(Total Quality Management)推進部に在籍していた2000年ごろのことです。当時のトヨタは大変忙しいにもかかわらず、人員や労働時間などのリソースを急に増やすことができず、全社的な業務改廃=業務効率化を必要としていました。私は業務改廃プロジェクトにTQM推進部として関わっていましたが、プロジェクトでは「トヨタ生産方式(TPS)」の考え方に基づいて「ムダ・ムリ・ムラ」を徹底的に排除して業務効率改善を行い、生産性や品質向上に大きく寄与しました。

その後、私はトヨタを退職しましたが、当時の経験を生かして開発したのがこの「トヨタ流 業務改善研修」という訳です。実際の研修では、TPSの基本的な考え方に時代や環境の変化、ニーズに合わせた内容もプラスして、皆さんに解説、演習などを行います。

この研修に限らず、トヨタ流の研修全般で受ける質問ですが、皆さんが気にされるのは、製造業以外の業種でこの研修を生かすことができるか」という点です。

答えは、もちろん可能です。業務改善研修は製造業以外のサービスや営業・販売・事務系など、幅広い業種に対応できるようアレンジされています。例えば、工程や手順などの「業務プロセス」を見える化することは業務効率化において必須ですが、製造業以外では、工程が「担当者の頭の中」にしかないことも多くあります。研修ではそれをいかに「見える化して共有するか」という手法も学びながら、チームとして議論する演習なども行います。研修では下図のようなステップを踏みながら、改善すべき点の洗い出しを行います。

ではここからはDX推進(デジタル技術活用)についても考えていきたいと思います。現代における業務効率化において、DX推進は欠かすことができません。しかし「IT」や「AI」など目新しい技術が出る度に「IT化」「AIの活用」が目的になってしまっている企業を多く目にします。ここでは「そもそも業務効率化とは何か?」を改めて考えながら、DX推進を成功させるまでの道のりについて考察してみます。

きっとここを読んでいらっしゃる皆さんは、業務効率化やDX推進について何らかの悩みをお持ちの方だと思いますが、あなたは「業務効率化とは何か?」を端的に答えられますか?

では、その何らかの目的とは何でしょうか。私は企業が業務効率化を推進する目的は大きく、次の5つだと考えています。①会社としての競争力を上げる➁ 新規業務や重点課題を進められるようにするために時間をつくる③ 残業時間や業務負荷を低減する④メンバーの改善力を上げる(人材育成)⑤メンバーのモチベーションを上げる

多くの企業はこのどれか、もしくはいくつか複数の目的のために「業務を効率化したい」と考えているはずですが、これらの目的を達成するにはそれぞれの目的に合わせた進め方をすることが重要で、研修ではその詳細を学びます。「トヨタ流 業務効率化研修」が最もこだわっているのは、「目的」の明確化だといっても過言ではありません。DX推進も実はこれと同じで、目的のないDX推進はまったく意味を持たないものになってしまうのです。

私が実際に話を伺ったある企業では、同業他社との競争力強化を目的として、全社でデジタル技術を活用したDXへの取組みを開始してはみたものの、「競争力向上」という本来の目的において本当に効果的なのか?という大きな疑問をお持ちでした。「競争力向上のためのデジタル技術活用」ではなく、「デジタル技術を使うこと」自体が目的となってしまい、様々な取組みをしても、思ったような効果が感じられなかったのだと思います。

DXは技術そのものではなく、有効的な手段に過ぎません。大切なのは、手段(DX)を目的のために上手く活用することです。目的は何か、その根本に立ち返ってDXを推進することが、成功への近道となるのです。

上ではわかりやすく簡単な例を紹介しましたが、誰もが名を知る大企業でもこうした「DX迷走」は実際に起こっています。研修ではこうした業務効率化やDX推進における

●「目的」や「手段」の取り間違いに陥らないポイントなどを解説するとともに

●どんな場面でどんなデジタル技術が使用できるか

●実際の活用事例なども紹介します。

いわばコンサル的なアドバイスも含めながら、研修を受けられるのも「トヨタ流 業務効率化研修」の特長の一つです。とは言っても、私たちが研修の目標にしているのは、コンサル的な役割を果たすことではなく、研修を通じて、その企業が継続的に自走していただく仕組みづくりや、最適解を見つけるお手伝いすることです。

ここで研修を実際に受けられた方の感想を少しご紹介します。

●現業に当てはめて考えられる研修を久しぶりに受けた。研修内のグループワークで、他部署の意見を聞けたのも有意義だった。

●実戦的な資料で、すぐ活用したいと思えた。また、共感できる課題が多かったのもよかった。

●資料一つひとつに意味があり、何を目的にその改善を行うのか理解しやすかった。

●デジタル推進ありきで仕事の改善を考えていたが、そこに廃止や延期の判断が必要な場合もあると気づけた。

最後に質問です。いま、業務効率化を目指しているあなたの会社は、下の3つに当てはまっていませんか?

●業務効率化のはっきりした計画がない

●業務効率化の目的や目標があいまい

●業務効率化の責任者がいない

もしあてはまっていると感じられた方や現在の取組みをカイゼンしたい方、これから業務効率化を推進したい方も、どうぞお気軽にご相談ください!

第6回:問題解決研修に対する質問に講師が回答!「問題解決のスキル向上」で、仕事力も生きる力も強くする!

リニューアルし、よりわかりやすくなったと好評の『問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~』。今回は「よくある質問」や、「研修導入のポイント」、そして「問題解決スキル」を身につけるメリットなどを解説します。

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。私は研修講師を担当する中で、多くの企業の担当者から質問・相談を受けますが、最も多くいただく質問が『問題解決研修 基礎編 〜8ステップと考え方~』に関連する事柄です。

本年度リニューアルしてからは、より多くの質問をいただくようになりましたので、今回はそれらをまとめて回答したいと思います。研修を受けるならどんなタイミングがいい? どの階層に取り入れる?それはどのような効果につながる…? 今回のコラムでは、こうした悩みや疑問にお答えします。

A. リニューアルした『問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~』では、1日かけて行う「7時間研修」と、半日で行う「4時間研修」の2つをご用意しています。

半日の4時間研修は、7時間研修の内容を集約したダイジェスト版です。そのため演習はなく、テキストとスライドなどによる解説で研修を進めます。4時間研修は、トヨタ流の問題解決法をある程度ご存じで再確認されたい方や、どうしても忙しくて時間が取れず、短時間でポイントを理解したい、という方のためなどにご用意したものです。

以上の2つがありますが、やはりおすすめは「演習」のある7時間研修。演習を行うことで、研修の核心部分を体得しやすく、また研修での学びを自分の仕事上でも活用しやすくなります。

A. わかりやすいように、実際に使う演習問題を少しだけここでご紹介しましょう。今回ご紹介するのはStep1「問題の明確化」、基本中の基本の部分です。

●Step1「問題の明確化」の演習では

この2点を理解することがポイントです。

●まず、「あなたが経理担当者で、請求処理においてイレギュラー処理を改善する場合、どう対処しますか?」という例題のもと、「現状」「問題(ギャップ)」「あるべき姿」の青い四角の中に想定される事柄を埋め込んでもらいます。すると、ほとんどの人からは以下のような回答が返ってきます。

しかし、①から③に書かれた答えは

・①曖昧な現状

・②問題(ギャップ)というより、その対策

・③曖昧な理想

でしかありません。

そこで、トヨタ流で問題解決を行う場合はどんな「現状」「問題(ギャップ)」「あるべき姿」になるか、スライドで答えを見てみます。

トヨタ流の問題解決では、「現状」「問題(ギャップ)」「あるべき姿」のそれぞれをしっかり数値化するのが特長です。数値で表すことで、共通の「ものさし」ができ、「関係者間で認識の違いが出にくい」というメリットにもつながります。そして、ここまでできて初めて、「あるべき姿」をめざすために本当に必要な「具体的手段・手法」が見えてくるはずです。

演習は「目的・目標」が知らない間に「手段」にすり替わってしまうなど、仕事上で陥りやすい点を中心に行うのもポイントです。 もちろん「自分の仕事でどう活用できるか」までを学ぶこともできます。

A. はい、A3資料のまとめ方は研修でも演習に取り入れています。トヨタでは、仕事を進める際にA3の資料にまとめることがよくありますが、ここで「A3資料の魅力」は何だろう?を改めて考えてみます。A3資料作成の手法が選ばれるメリットは、次の3点です。

・1枚で全てがわかる「一覧性」があり、資料1枚あれば、「全てのこと」が「誰にでも理解」できる。

・「A3(もしくは1画面)の限られたスペースの中で、重要なポイントを絞る」。新しい仕事のたびにこれを繰り返すことで、何が一番大切なのかを常に考える訓練につながり、ブレが起こりにくくなる。

・わかりやすい資料にまとめて記録・保存することで、後輩や次世代へ伝承しやすい。

パワーポイントなどで資料をまとめてももちろん一定の効果はありますが、こうした資料づくりではどうしても資料枚数が多くなりがち。何十枚にもわたる企画書を、あなたもきっと目にしたことがあると思います。またパワポなどのアプリに頼った資料作りは、余分な装飾など本来の目的とは違う「情緒」に訴える部分に時間を割いてしまうことも少なくありません。

ここで改めてA3資料の魅力について考えてみましたが、効率良く「目的〜標準化」までを一覧化するだけでなく、それを周囲と共有でき、さらにその都度資料を見て振り返りながら「日々の仕事の中で生かすこともできる。私は、A3資料にまとめる仕事の進め方は、とても理にかなった手法だと思っています。

背景から目標、標準化までが一覧化されたトヨタ流A3資料のまとめ方の例。演習でもこれを使用して解説します。

A. はい、もちろんです。私はこの研修に類似した内容で、大学の学生に指導することもありますが「TOEICの得点を上げる」「部活の成果を出す」「サークルの人数を増やす」など学生の身近な悩みを課題として演習を行うと、多くの学生たちはその演習をきっかけに悩みを解決につなげています。

この例からもわかる通り、研修は「自分ごと」として置き換えやすく、新入社員でも十分に理解・実践することが可能です。

A. 私は企業にとって重要なのは全ての社員(できれば関係各社まで)が理解できる「共通言語」が多くなることだと考えています。たとえば、トヨタでは「カイゼン」「共通言語」となっていますが、それは単なる語句として理解されているのではありません。何かの問題に対して「カイゼン」と言われた場合、そこにいる人は「カイゼン」のひと言で、その目的や考え方、そして目的にたどりつく手法などまでが頭に浮かんでいるのです。これこそがめざすべき「共通言語」です。

こうした例でわかるように、問題解決研修は、最終的には全階層の社員が受講し、それが「風土」になることが理想ですが、まずは上層部から順に、問題解決の考え方や手順を理解していただき、順次広げていってもよいと思います。

A. 『問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~』に続く「応用編」には多くのリクエストをいただいており、現在開発中です。リリースができ次第、こちらのコラムでも紹介していきます。

一歩進んで、具体的な仕事の段取りや実行について学びたいという方には、『トヨタ流仕事のカタ 基本実践編』がおすすめです。

「問題を解決する」=「あるべき姿を探す」ことは、「仕事そのもの」です。自分自身の目標や悩みにも当てはめることができます。

先日、研修を受けたある企業の方から「社員に『効率良く仕事を進めてもらいたい』という理由から研修を受けてもらいましたが、まず大切なのはしっかりと『あるべき姿』を理解することだと自分自身も気づかされ、目からうろこが落ちるようでした」という感想をいただきました。まさにその通りで、決して「効率良く仕事をすること」が会社の目的ではないはずです。

私は、「あるべき姿を常に意識」できる「問題解決のスキル向上」は、仕事をする上、さらには生きていく上でかなり有効的だと考えています。

環境変化のスピードが格段に速くなっている昨今、「いま、あるべき姿」をその都度確認すること、そしてそれを瞬時にジャッジできる上層部がいること、それがこの先を生き残るために必要なことだと思っています。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。まずはお気軽にお問合せください。

第5回:新作研修「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」は「風土改革」・「人財育成」に直結する!

このたび内容をリニューアルした「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」を講師が解説します!

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは、講師の藤原です。今回のコラムでは、リニューアルした「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」についてお話ししようと思います。

お陰さまで「問題解決研修」は人気の研修となり、多くの企業に採用していただいています。この研修では、トヨタ流の基本的な「問題解決」の考え方を「8つのステップ」を通して学びながら多角的な演習を行いますが、なぜトヨタが「問題解決」をここまで大切にしてきたか、そしてそれがトヨタの成長にどうつながったのかも深掘りし、お伝えしています。

また要望の多かった「問題解決研修をあらゆる業種・業態でも活用できるようにして欲しい」という声にお応えするため、それぞれの業態・業種に必要なポイントをおさえて「カイゼンサイクル」を学ぶことができるようになった点も大きなポイントです。ここでは簡単にトヨタ流「問題解決研修」ではどんなことを学んでいるかを説明しながら、トヨタ流の研修は何が違うのか? トヨタ流の研修なら何を体得することができるのか?を解説したいと思います。

上の「8つのステップ」はトヨタ流の問題解決法の一つとして広く知られ、今も世界中のトヨタで実践されています。ステップにおける考え方のコツ・秘訣までしっかり明文化(文章化)しています。これによって研修内容を職場で応用するときも、方向性を見間違うことなく問題解決につなげやすくなりました。一日間(7時間研修)では演習を多く織り込み、一人ひとり、個人の問題に当てはめた実践もしやすくなっています。

そしてこれは大きなポイントですが、トヨタ流「問題解決」は、ツールや手順を使うという「手法」ではなく「考え方」ということです。たとえば、思考の枠組みを考える「フレームワーク」の構築法や、論理的思考法ともいわれる「ロジカルシンキング」など、問題解決の手段と呼ばれるものは数多く存在します。もちろん、それらの手法を知ることは仕事を効率的に進めるために重要ですが、「一人ひとりが別々に」それを行って「その場、その場」で問題をクリアしたとしても、なかなか問題の根本を解決することにはつながらないのが実情です。また、同様の問題が再発しやすいというデメリットもあります。

これは医学的な「対症療法」と「原因療法」の違いにも似ています。「対症療法」は現れている症状を改善する治療法で、頭痛の際に鎮痛剤を飲むのはまさにこれ。根本の原因を取り除く訳ではありません。対して「原因療法」は病気の原因を取り除き、根治をめざす治療です。でももし頭痛の原因が深刻な病気だった場合、鎮痛剤でごまかし続けていたらどんなことになるか…。答えは火を見るより明らかですね。仕事も同じです。

またトヨタ流の「問題解決」は英語では、「Toyota Business Practice(トヨタ ビジネス プラクティス)/TBP」と表現します。直訳で考えれば「Toyota Problem Solutions(トヨタ プロブレム ソリューションズ」となりそうですが、「ソリューションズ(解決・解答)」を使わず「プラクティス(実践)」としているところからも、トヨタのこだわりを感じるように思います。

問題は解決したら再発させず、恒久的な改善につなげることが重要ですが、まさにトヨタ流「問題解決」は、その場をしのぐ手法や対症療法ではなく、原因を探り、日常の行動に実践を落とし込んで根本から解決する「原因療法」だといえます。

もう一つ、トヨタと一般企業の大きな違いに、カイゼンやその考え方などの研修が教育体系にしっかり組み込まれているという点があります。

トヨタでは管理職から新入社員に至るまで、階層別の教育体系が完備されています。こうした研修を通じて全ての従業員が考え方や手順に必要な「共通言語」を理解していくため、仕事はスピーディーで間違いも少なくなり、めざす方向性のブレも小さくなります。

たとえばトヨタの社内では、3現主義=「現地」「現物」「現実」や、「なぜなぜ5回」などの共通言語がありますが、何か問題が起きた際「3現主義は守られているか?」と言われるだけで、その指摘の背景にあるものまで瞬時に理解することができます。残念ながらそれでも間違いは起きますが、トヨタの右肩上がりの成長の持続は、間違いやブレを最小限でとどめていることに結びつくのは間違いありません。

さらにこうした考え方や教育体系は、トヨタ本体に限らず関連企業にも浸透。グループ全体で「共通言語を体得」することでトヨタ系企業の風土・体質を向上させ、グループパワーとしての莫大な強みにつなげているのです。

これは私見ですが、トヨタがこだわっている問題解決のポイントは以下の5つだと思います。

企業の人事部の方から、「自社にトヨタ流「問題解決」を取り入れ、効果を出すことはできるでしょうか?」という質問をいただくことがありますが、答えは「YES」です。あらゆる業種・業態で可能です。この事例などは、別の機会に詳しくお話ししたいと思います。

また、「問題解決研修を受けてみたいが、新人や中間管理職など、どの層に研修を受講してもらうのがよいか?」という質問をいただくことがあります。そんなときは「できればすべての層に受講していただき、社内で共通認識をもっていただくのが効率的」だとお答えしています。

重要なのは組織全体で問題解決を実践する職場風土を醸成するため、それに必要な「共通言語」を多く構築していくかです。仕事のすすめ方に、「共通の認識=共通言語」があれば、ブレのないスピーディーなやりとりができますし、ヌケモレやミスに気づき、早期解決することができます。

そして問題解決の考え方が定着すれば、上司・先輩から部下・後輩へとつなげていく社内教育が可能になり、それはトヨタでも「教え・教えられる」文化として継承・実践されています。

「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」を実際に受講した方からは、こんなコメントを頂いています。

人材育成や風土改革を推進する企業は多くありますが、私はそのポイントになるのは、実は「考え方の習慣化」だと思っています。

問題解決に向け、一つひとつ、手順を考えながら答えを求めるのは慣れるまでは面倒に思えますが、習慣になれば条件反射的に問題解決の考え方や手順が湧いてくるようになります。そして、それが体得できれば上流から下流へ指導できるというグッドサイクルへとつながります。

また、共通言語を使った仕事の進め方は、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる「心理的安全性」にもつながると、私は確信しています。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。まずはお気軽にお問合せください。

第4回:新規事業のアイデア出しには、「視点と手順」の理解が必要!

今回のコラムでは、「トヨタ流仕事のカタ研修」の「価値創造実践編(革新のカタ)」について藤原講師が解説します。新たなビジネス価値の創出を求めてDX推進に取り組む企業が増えていますが、「新しい何か」を生み出す「価値創造」に苦手意識をもつ方は多いのではないでしょうか。「革新のカタ」は、それを打開する考え方・手法を学ぶ研修です。

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。このコラムでは、「トヨタ流仕事のカタ研修」という新たな研修について解説しています。今回解説するのは、カタ研修の中でも、最終段階の「価値創造実践編(4・革新のカタ)」についてです。

「価値創造=新たなアイデア出し」に苦手意識をもつ人は少なくありません。また多くの企業では、柔軟なアイデアを出すだけでなく、それを実行・実践できる人材を育成したいと考えています。

ちょっとここで本題に入る前に、みなさんから「なぜこの研修は、仕事で即実践できるのか?」という質問をよくいただくので、まずはそれにお答えしたいと思います。「研修は即実践できなければ意味がない」と私は常々思っていて、即仕事に生かせる研修の手法をさまざまな角度から検証してきました。そこで行き着いたのがこの研修方法です。

カタ研修では、仕事を効率良く進められる方法を「見える化しながら学び」、それを「仕事で即実践できる」よう講義を進めますが、そこではQ&Aの記入形式になったオリジナルの「ツール」を多く使います。「ツール」には問題や課題を解決するために必要なQが順序立てて書かれています。そのQに対するAを、自身やチームで一つひとつ深く考えることで仕事上の解決策が洗い出せ、即、仕事につなげられる、という仕組みになっています。また、ツールはさまざまな問題・課題に応用して使うことができるのもポイントです。 過去のコラムに「トヨタ流仕事のカタ研修」が生まれたきっかけとともに基本実践編を紹介しているページや、課題解決をテーマにした応用実践編を紹介したページもありますのでぜひ参考にしてください。

さて、本題である「価値創造実践編(4・革新のカタ)」研修について解説していきましょう。どんな企業や部署でも、ある程度、問題や課題が解決されると(ときには決されていなくても)、「新しい何か」に着手しなければならないというテーマが生まれます。企業が成長するためには新規事業への挑戦や新規の商品開発は不可欠だからです。

しかし「何かをしなければいけないのはわかるが、何をやればいいのか案が浮かばない」という方は多いでしょう。当たり前ですね。コロナ禍を経て常識すら変化した今の時代、新たなことへの挑戦はほとんどの企業で苦戦、暗中模索しています。また、上司と部下の価値観の差や「これまでの常識」と「これからの常識」をどう捉えるかでも考え方は変わるため、幹部や上司も「どう指示したらいいのか分からない」というのが本音ではないでしょうか。

ここでみなさんにお伺いします。

●「何か新しいこと考えてよ」

●「何か新しいアイデアはないの?」 

上司からこう言われたことがある、もしくは自分から言ったことがある方はいらっしゃいますか?どうでしょうか。

私の経験からすると、ほとんどの方が言われたことがある、もしくは言ったことがあるはずです。もちろん、新たなことを考えることは大切ですしとても良いことですが、しっかりとしたテーマが思いつかなければ、言われた方は困ってしまいます。

もし「チャンスだ。よし、一発いい案を出してやろう!」と意気込んだとしても、上司から「根拠や事例がない」「いまやるべきことは、そこではない」などとダメ出しされ意気消沈…なんてケースも多いはずです。斬新なアイデアを会議で披露し、「おお、いいね!」と皆からウケてそのノリのまま進んでも、結果が出せずに尻すぼみ…というケースはきっと皆さんの身近にもあるのではないでしょうか。

そうしたケースを多く見る中で、私はいかに「新しい何か」の「核心」に沿って価値創造を進めることが重要か、そしてその「核心」を見つけるためにはまず「目的を洗い出す」ことが重要だということに気づいたのです。

自分の会社や部署にとって、「新たな価値を生み出す目的」をしっかり理解することは、新たな事業を検証するだけでなく、既存事業の強みや市場優位性の再認識にもつながります。また上司と部下、もしくはチームでそれらの「目的」を共有することで、ブレのない効率的な価値創造が可能になります。

研修では、ツールを使って「新規事業開始時期」や「対象地域」など基本的な事項を確認しながら、新規事業の「目的」を、「価値追加」や「価値拡大」など大きく5つに分けた「目的区分」の中から選び、その目的に合った手法でアイデア出しを行っていきます。

「価値創造実践編(革新のカタ)研修」では、目的に合わせたアイデア出しの発想法などを学ぶことができ、
さらに新規アイデアの事業化スケジュール策定までを細かく、具体的に行います。

こうして闇雲にアイデアを出すのではなく、一つずつ根拠を「見える化」しながら「新しい何か」を探すことは、新たな価値創造の成功への最短距離を見つけることにつながります。また研修が即、仕事で活かせるよう、新規事業のアイデア出しの手法などを学んだ後、事業化へのシナリオやスケジュールの策定までを学べるのもポイントです。

さらに「価値創造」は業種・業態によって幅が大きいため、「価値創造実践編(革新のカタ)研修」は業種・業態に合わせてカスタマイズした内容で進めることも可能ですので、そのあたりも安心していただけると思います。もちろん、クリエイティブ系の仕事でも同様に活用することができます。

また、事業化へのシナリオなどまで考える「価値創造実践編(革新のカタ)研修」は、コンサルティング会社への相談と同様のように思われる方もいるかもしれません。その違いについても少しご説明しましょう。この研修の強みは「自ら考え、乗り越える力を身につける」ことです。

私は多くの企業のさまざまな相談に応えていますが、「コンサルに相談したが、うまくいかなかった」というような声を多く耳にしています。しかしそうした不満を抱える企業の問題点を紐解くと、問題・課題や解決策をすべて丸投げしてしまう点にあるように思います。そうならないためには、まず、自社内で「考える力=乗り越える力」をつけることが重要だと思うのです。

何か新しいことを生み出す作業は大変で、私自身も苦手分野の一つでした。しかし、「目的に応じた視点と手順」が重要なポイントだと気づいてからは、創造が楽しいものになりました。皆さんも一緒に、楽しむ気持ちで未来を創造しましょう。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。

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第3回:「カタ研修」で「課題解決」。トヨタ流「課題解決」は、未来を切り拓く!

今回のコラムでは、藤原講師が「トヨタ流仕事のカタ研修」の「応用実践編(3・改革のカタ)」を解説します。応用実践編では何を学ぶのか? そしてどんなシーンに効果的なのか? など、研修のポイントを伺いました。

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原: 「問題解決」と「課題解決」…とてもよく似た言葉ですね。日本語的にはどちらも同じような意味で使われたりしますが、「トヨタ流仕事のカタ研修」ではあえてこの2つに線引きし、「問題」と「課題」の違いについて理解しながら研修を進めていきます。

少しおさらいすると「トヨタ流仕事のカタ研修」は、「基本実践編(1・段取りのカタ)、(2・改善のカタ=問題解決ステップ)」、「応用実践編(3・改革のカタ)」、「価値創造実践編(4・革新のカタ)」の4つで成り立っています。

先回(第2回)のコラムで解説した基本実践編「段取り・実行のカタ」は、仕事そのものの目的を振り返ることで問題を見いだし、それを解決して効率良く仕事を進める方法を学ぶものでした。  今回ここで解説する応用実践編「改革のカタ研修」は、それより一歩進んだ「課題解決」がテーマで、ステップにおいて、さまざまな視点から考え、次の2点を学びます。

①企業や組織を取り巻く外部環境・内部環境の変化に合わせ、「あるべき姿(目指す姿)」を「自ら」設定できるようにする。

②「あるべき姿(目指す姿)」の実現に向けて各自が何をすべきか? どのように進めるか? を詳細に明確にし、関わる全員で共有できるようにする。

藤原:話を戻しますが  「問題解決」と「課題解決」、この違いは何でしょうか。「問題」「課題」の違いをわかりやすく言えば、

●「問題解決」はマイナスからゼロ(基準・標準)へ

●「課題解決」はゼロからプラス(より望ましい姿)へ 

ということです。

●「問題解決」=「改善」

●「課題解決」=「改革」 

と捉えることもできます。

「問題解決」と「課題解決」は、どちらも「現状」と「あるべき姿」の「ギャップを埋めるのが目的」という点は同じですが、「目指す姿」は明らかに違います。

これをしっかり分けて考え、見える化しながら仕事を進めることで進むべき方向を見間違うこともなくなります。

藤原:より高みを目指すには、土台から整えていくことが重要です。企業を「より望ましい姿」に改革させるためには、まずは問題解決→課題解決というステップアップが必要です。

ではここで質問です。あなたは自分の仕事や職場に当てはめて「問題」と「課題」を即座に答えられますか?どうでしょう? 特に「課題」を明確化するのは難しいのではないでしょうか。また「課題」を言うことはできても、そこにしっかりとした根拠はありますか? それは単なる思いつきではないでしょうか? 

厳しいようですが、根拠のない「課題」は絵に描いた餅にもなりがちで、失敗したり頓挫したりするケースをよく見受けます。そうした「課題」の明確化の方法の手順までしっかり学ぶことができるのも、この研修のポイントの一つになっています。

では研修で、どうやって課題解決法を明確にしていくのか、それを少しだけご紹介します。まず前提は、

「トヨタ流仕事のカタ研修」の特長は仕事を効率良く進められる方法を「見える化しながら学べる」こと、そしてそれを「仕事で即実践できる」こと

ですが、この「改革のカタ研修」も同様で、課題解決の重要な考え方が質問形式になった「ツール」を使いながら自分の仕事上の課題を洗い出し、即実践できるよう研修を進めていきます。「改革のカタ研修」の8つのステップの第一段階は、「1.取り巻く環境の把握と課題の明確化:目指す姿(あるべき姿)の設定」です。

「ツール」を使いながら自身の目指す姿を描き出すことで

①目指す姿の実現に向け、解決すべき課題を明確にできる。

②目指す姿がはっきり見えれば、自分はもちろん、一緒に行動する人のモチベーションも上がる。

③根拠のあるはっきりとした「目指す姿」は迷ったときの拠り所となり、方向転換もしやすい。 というメリットを体得することができます。

藤原:「問題解決」の「問題」は基準・標準をクリアするためのものなので、誰でもその「目標」は理解しやすく、手順さえ共有できるようになれば足並みを揃えて進むことができます。

しかし、「課題解決」の「課題」はより望ましい「あるべき姿(新たな目標)」を「意図的に」つくり出すため、ブレが起きやすいという留意点があります。

例えばコロナ終息を目指す言葉に「ウィズコロナ」と「ゼロコロナ」がありますが、似ているようでも目指す姿は全く違います。しかし「コロナ終息」という大きなくくりの目標しか見えなかった時期は、世界中の国や人が右往左往し、さまざまな手段を試みました。これが「ブレ」です。

ブレは仕事のスピードを失速させ無駄を多くつくります。それをなくすためにも、「だれにでもわかりやすい課題づくり」と「あるべき姿(新たな目標)」の設定は重要です。

「あるべき未来」の形が見えたとき、人はその実現へ向けて正しい行動を取ることができるのです。

コロナの例はあくまでも単純なたとえですが、職場で課題解決を目指す場合、こうした共通認識をもつことは非常に重要となります。

藤原:次にステップの4番目に学ぶ「課題の体系化(課題バラシ)と対策立案」について解説しましょう。ここではまず、①課題を体系化(バラす)することの重要性を学びます。

体系化やフレームワークという言葉はビジネス上でよく使われますが、「順を追ってやるべき『重要項目』を『優先順位』に沿って書き出すこと」だと考えれば大丈夫です。

研修でもツールを使って実際に書き出して、課題の体系化を行います。こうすることで目標達成のための具体的にやるべきことを明確にでき、漏れをなくすことができます。また、②対策立案のポイントについても学びます。ここでは①で洗い出した項目の対策を考え、具体的に行動計画を立てていきますが、

これには「あるべき姿」に向けて何をすべきか仮説を立て、従来のやり方に囚われないアイデアや発想を用いることが大切になります。

「問題解決/改善」と違い、新しい課題に向かう「課題解決/改革」は細かく仮説を立てることが重要になりますが、研修ではこの仮説の立て方まで細かくレクチャーするので安心してください。

この研修を実施する上で私は「即仕事に使える研修にすること」をとても大切にしていますが、もうひとつ大切にしているのは「価値連鎖を生みだせる研修であること」です。

研修を受けた結果、受講当事者はもちろん、その先につながる部下、同僚、上司、取引先にも価値が広がるように考えて構成しています。こうしたカリキュラムの作成も、「仕事のカタ」の考え方に基づいているんです。

藤原:私は仕事柄、さまざまな企業の人事・総務の担当者から

●「前例踏襲」するだけの社員をなくしたい…。

●悪いところだけを探して、モグラたたきのように場当たり解決する社風をなんとできないか???

●指示待ちの社員を減らしたいがどんな方法があるか?

というような相談をもちかけられます。多かれ少なかれ「あるある!」という企業は多いはずです。こうした悩みにも、「応用実践編(改革のカタ)研修」は効果的です。

「課題」の創出は、未来を切り拓くためには不可欠のものです。

課題を作れる人材を増やし、「課題づくりや課題解決が日常的な環境をつくること」。それこそが企業成長につながると私は考えています。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。

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第2回:トヨタ流仕事のカタ 基本実践編を藤原講師が解説。仕事の悩み・困り事には「一定の法則と解決法」がある!

コラム第2回目の今回は、「トヨタ流仕事のカタ研修」が生まれた背景とともに、改めてこの研修について藤原講師が解説。さらに、なぜこの研修が業種・業態関係なく役立つのか?も紐解きます。それとともに、基本実践編「段取り・実行のカタ」で学ぶ内容についても伺いました。

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

「仕事の悩みは千差万別。だから解決法もそれぞれ違う?」答えはNO。悩み・困り事には「一定の法則と解決法」がある!!

藤原:仕事をしていれば、大小はあってもさまざまな悩みが出てくるのは当然です。仕事に一生懸命であればあるほど、その悩みはつきないと思います。

例えば上司なら、「仕事の指示がうまく伝わらず、手戻りが多くなってしまう」「その結果、スケジュールから遅れてしまう」。部下の立場からすれば、「どんなに頑張って企画を立てても上司とのズレや漏れが出て、やり直しになる」「関係部署から理解を得られず、仕事が進めづらい」…。こんな悩みは多いのではないでしょうか。

次のような悩みもよく耳にします。「会議が慣例化してしまい、意義を生み出しづらい」「仕事の標準化を図りたいが、やり方がわからない」「部下が何を考えているかわからず、指導法が見えない」「若い世代の『心が折れる』状態をなくしたい」…。

仕事の悩みや困り事は千差万別のように思えます。業種・業態によって違う悩みが生まれるでしょうし、それが発生するシーンもさまざまです。

しかし実はどんな業種・業態であっても、仕事上の悩み・困り事には一定の法則と解決法があり、その法則や手順をしっかり理解して場面ごとに生かすことで、悩み・困り事をなくし効率化を促進できることが、私の研究の結果から見えているのです。

そもそも、「トヨタ流仕事のカタ研修」が生まれたきっかけは?

藤原:今でこそ私は大学で教鞭を執っていますが、かつてトヨタの社員時代、何度も仕事のやり直しを命ぜられ、そのたびに「なぜ、この仕事を戻されたのだろう?」「どうして、上司が指摘する部分に事前に気づくことができなかったんだろう」と自問自答するとともに、悔しい思いやストレスを感じてきました。その経験こそが、この研修を生み出した原点になっています。

私はトヨタを退職後「自分のような思いをせず、心地良く前向きに仕事ができる環境づくりをしたい。もっと皆が幸せに働ける就労環境をつくりたい」と、こうした研究を始めた訳です。

そして研究を通して数多くの職場視察や経営者への個別相談を行い、そこから見えた悩み・困り事を解決するためにまとめたのが「トヨタ流仕事のカタ研修」なんです。

これを読んでおられるのは、企業の総務・人事職の方や、どうやって社員を教育したらよいか迷っている・悩んでいるという方が多いと思います。

そして一番気になるのは、「製造業である『トヨタ流』を使ったこの研修が、自社・自業務にうまく当てはまるのか?という」という部分ではないでしょうか。

答えから言えば、YESです。アプローチ法こそ違いますが、仕事にとって肝要となるのは「その仕事のそもそもの目的に立ち返り、最適な方法を決める」ことと「仕事のシーンに合わせて重要な視点と手順を使う」ことの2つです。

もう一つ、「上司や関係部署といかに共通認識を持って仕事を進める」ことも、しっかり押さえるべきポイントです。

トヨタと言えば「トヨタ生産方式(TPS)」「カイゼン」「ジャスト・イン・タイム(JIT)」などが世界的に知られ、そのノウハウはさまざまな企業に導入されています。そしてその要素はこの研修にも多く取り入れられています。

ですが目標値がはっきりわかりやすいモノづくり系(研究、開発、設計、生産技術、製造など)と、営業・販売・クリエイティブ系とでは、扱う相手とPLANとDO段階でのアプローチ方法が大きく異なるため、それも研修では学んでいきます。

考察1「仕事の進め方」モノづくり系

藤原:たとえば、モノづくり系では「モノ」に対して「バラツキをできるだけ抑える方向」で仕事を進めることが重要です。またモノづくり系は「目標値が明確」であるがゆえに「そもそもの目的」を忘れがち。研修を通じ目的に立ち返ることで、さらに良い方法を考えることができますし、「誰のために、どんな価値を提供するべきか?」を考えることでモチベーションアップにもつながります。また環境変化にも柔軟に対応できるようになります。

考察2「仕事の進め方」営業・販売・クリエイティブ系

藤原:一方で営業・販売・クリエイティブ系では相手が「人」であることが多く、「バラツキを前提として一人ひとりまたはターゲット層に合わせたアプローチ」が必要になってきます。

しかし営業系では、人に対する柔軟性を高めることに注力してしまい、事前の課題やリスクの洗い出しなどが手薄になりがちに。企画が頓挫して振り返ると、PDCAのPDだけや、Dだけができていて、その他が実行できなかったという場面も多く見られます。こうした点も研修ではチェックします。 クリエイティブ系の仕事では、新しい価値を創造する、アイデアを発想するということが求められます。私自身アイデアを出すのがとても苦手でした。いつも誰かのマネをする、ノウハウ本やマニュアルに頼った時代もありました。ですがそうした本を多く読むうちに、発想にも「目的に応じた視点と手順」があることに気づき、それらは応用編「革新のカタ」で学ぶことができます。

「トヨタ流仕事のカタ研修」は、「カタ」と「ツール」の組み合わせまず、基本実践編で学べることとは?

藤原:「トヨタ流仕事のカタ研修」は、トヨタで使われている効率的な仕事を進めるノウハウに加え、業種・業態は違っても、ほとんどの仕事に共通する「考えておかなければならない仕事の項目」を「段取り・実行(基本実践)」「改善(問題解決)」「改革(課題解決)」「価値創造」の4つの「カタ」に分け、それぞれに細かく「ツール」を用意しているのが大きな特長です。

そして各「ツール」を使って演習しながら、悩み・困り事の「根本」の部分を「見える化」し、スピーディーで質の高い仕事の実現へと導きます。

1番始めに学ぶ基本実践編「段取り・実行のカタ」には

●企画段階

●仮説・検証段階

●指示を出す・受けるとき

●報連相の進め方

…など仕事のシーンごとに分けられた「ツール」が8つ用意されており、「ツール」の中には質問形式で、考えておかなければならない事柄がまとめられています。

まさに「ツール」の質問の中には、仕事で起こると予測される「悩みの元」が網羅され、「今、悩んでいること・困っていること」に即座に当てはめて考えることができます。「社員研修をしても、その成果を体感したことは少ない」と聞くことがありますが、この研修が目ざしているのは「実践・実戦」が可能であること。研修で学んだ各「ツール」は、翌日からでもすぐに自分の仕事に活かすことができます。

「ツール」で、「考え方を標準化」し「問題を見える化」する

藤原:もう少しだけ、具体的に見ていきましょう。

たとえば、仕事の企画段階で使用する「ツール」の「企画メモ」には、企画段階で考えておくべき仕事の目的・背景からリスク対応などまでの15の項目があげられており、それを質問に沿って一つずつ書き出すことによって「この仕事は何のためにするのか、どう動けば良いのか」がしっかり理解でき、上司や関係部署ともしっかり共通認識することができるようになっています。まさに考え方の「見える化」です。

職場で、こんな失敗を耳にしませんか?「パワーポイントなどで企画書を綺麗にまとめたのは良いが、実働段階になるとうまく進まない」というパターン。見映えの良い文言と図説が並ぶ企画書通りにコトが運べば良いのですが、その通りにならないことは多くあります。

ですがその企画が頓挫する、思うように進まないという場合、企画書には押さえなければならないポイントや、共通認識のために必要な項目が抜けていることがほとんどです。そうした間違いを、「ツール」の使用でなくすことができ、質の高いスピーディーな仕事へとつなげられるのです。また「ツール」にはできるだけ短時間でPDCAを実践できる工夫もなされています。

「目的と手段」を間違えると、仕事の方向性がずれるどころか、その企業や部署の進むべき方向性すら危ぶませてしまいます。そういった危険も、この「ツール」を使うことで見直しでき、回避できます。「トヨタ流仕事のカタ研修」は「考え方の標準」を学び、それを「見える化」して、即職場で生かすことができるようにする研修と言えます。

例えれば、パソコンのOSを入れ替えたり使い勝手の良いアプリケーションを導入したりして仕事の効率化を図るように、自分の頭の中に「「トヨタ流仕事のカタ」という最新バージョンのOSと、アプリケーションとして使える「ツール」を組み込み、理路整然と仕事を進めやすいようにするのです。また、それを職場全体で使うことで共通認識が生まれ、手戻りを少なくしながら仕事を進めることができます。

みんなで幸せに仕事を進めるために…。

藤原:実際に研修を受けた方からはこんな声を頂きます。

●本当のお客さまは誰なのか、何のために仕事をするのか、改めて振り返ることができ、仕事のモチベーションアップにつながった。

●「ツール」にあるような切り口で、順を追って仕事を進める習慣がなかった。研修で学んだ「ツール」を活かしたところ、仕事効率がぐっと上がった。

●管理職をしているが、「ツール」を部下と共有することで指導しやすくなった。

●人材育成のスピードを上げることができると実感した。

一昔前までは「幸せになるために、先に苦労をする」という時代でした。

でも今は違います。すべての人が「いま」幸せになるために、どう仕事をすればうまくいくのかを考える時代です。働き方改革が進んだことで、時間を効率的に使わなければ仕事が回らず、上司や先輩にOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)をする時間がない、という悩みもよく耳にします。

こうした問題を、「トヨタ流仕事のカタ研修」で解決し、幸せを感じられる職場づくりをめざしてみませんか。

第3回コラムでは「応用実践編」、第4回では「価値創造実践編について詳しく解説します。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。

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