第10回:「早期成長」で「新人の離職」に歯止めをかける!新作研修『新入社員のための改善基礎研修』導入のメリットとは?

PROFILE
藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう

国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。先回のコラムでは新入社員の皆さんに向けた、新たな研修『新入社員のための改善基礎研修』解説その1として、なぜ、新人に「トヨタ流研修」 が効くのか? を探りながら、仕事の「目的」を理解する重要性をご説明しました。
今回は、もう1歩先に進んで考えてみたいと思います。

この『新入社員のための改善基礎研修』は『問題解決研修』や『業務効率化研修』の基礎となるものですが、私は従来から研修を行う側として、新入社員から経営層までそれぞれの立場で受講できる、一貫性のある研修プログラムがあればより効果的だと考えていました。というのも、企業研修には各社から実にさまざま種類の研修が提案されていますが、同じような目的に見える研修でも内容は似て非なるもの。類似していても「価値観」や「プロセス」などに一貫性があるわけではなく、あらゆる研修からランダムに受講することは、逆に混乱を招く可能性があると感じていたからです。

「あるべき姿」を目指し「全員で改善・改革」を進めることは、企業の成長には必須ですが、「あるべき姿」を目指すために複数の「研修」を加えるとき、その研修に一貫性があることで、より簡潔で効率的に「あるべき姿」に到達すると私は考えます。

今回『新入社員のための改善基礎研修』がラインナップに加わったことで、「トヨタ流研修」の、新入社員から経営層まですべての階層における研修体系が完成しました。それぞれの研修は業種・業態に限らず、どんな企業でも取り入れることができます。

このHP内にも新たに「トヨタ流研修体系図」が公開されましたので、ぜひご覧ください。

ところで皆さんは、新入社員にどんな人材に育ってほしいと考え、研修導入を考えていらっしゃるのでしょうか。
私のところには新入社員に対する、こんな悩みや相談が多く舞い込みます。
「指示したことはできるが、それ以上のことができない者が多い。自ら問題に気づき考動できる人材に育てたいが、どんな教育がよいか」「与えられた業務に対して深く掘り下げて考え、結果を出せる人材に育成したい」

『新入社員のための改善基礎研修』はまさにこうした問題を解決するための研修で、トヨタ流研修全体のテーマである「自ら問題に気づき」「考え」「変えていく力」を養う基礎となっています。

この考えの根本にあるのが「トヨタ生産方式/TPS(Toyota Production System)」。研修では、実践を通して自分の業務の「ムダ」「ムラ」「ムリ」を見つける視点や、「やめる」「へらす」「かえる」といったトヨタ生産方式(TPS)独自の視点を学び、自らの業務で即・実践することを目的としています。

皆さんもご存じの通り、トヨタがここまで大きく成長した大きな要因の一つは、トヨタ生産方式(TPS)による「カイゼン」の文化です。
トヨタは改善事例発表会や創意くふうなど、カイゼンにつながる仕組みを複合的に構築し、世界的な地位を確立しましたが、今もなお常に進化を求めています。
これと一緒とは言わないまでも、重要なのは「カイゼンすることが当たり前」の文化を、会社全体に醸成することです。

『新入社員のための改善基礎研修』では、「カイゼンすることが当たり前」であること、そして「カイゼンマインドを持つこと」が問題解決につながるのはもちろん、お客様へのプラスの影響だけでなく、自分自身や仲間の成長につながり、「そこに嬉しさ・喜びがある」という考え方を理解し、自分の仕事で実践できるよう学んでいきます。

私の新人時代のことですが、上司にこう教えられたことがあります。
「部下に3つ改善策を出されたとして、一つでもはじめからダメ出しをする上司はうまく部下を育てられない」
上司はその言葉通り、私が提案する改善策を全て受け入れくれました。
今考えれば、足りない点も多くありましたが、改善の「達成体験」は「承認欲求」を満たし、また仕事の「やりがい」にもつながり、私が大きく成長するきっかけになりました。「嬉しさ・喜び」を感じた訳です。では、『新入社員のための改善基礎研修』を通じて「改善の嬉しさ・喜び」を初期から体感することで、新入社員にはどんな力が身につき、変化が見られるのでしょうか。

①自ら問題を発見し、行動する力が身につく

・言われたことだけをやるのではなく、「なぜこの作業があるのか」「もっと良くできないか」と考えられるようになる
・自律的に業務を見直す力や、改善提案力が育つ。また、現場での信頼を早期から得やすくなる

➁小さな改善の積み重ねの価値を理解できるようになる

・「完璧な成果を出す」よりも「まずやってみて、少しずつ良くする」マインドにシフトできるようになる
・失敗を恐れずに行動でき、PDCAサイクルを回す習慣が身につく

③チームでの改善・協働意識が高まる

・個人ではなく「みんなでより良くする」文化に自然と順応できるようになる。
・コミュニケーション能力や巻き込み力が育ち、組織の中で協調して働けるようになる。

④問題に対して前向きな姿勢が定着する

・「問題=悪いこと」ではなく、「問題=改善のチャンス」と捉えられるようになる
・変化を恐れず、柔軟かつ前向きに課題に取り組む姿勢が身につく

『新入社員のための改善基礎研修』は、新入社員の皆さんだけで受講してもよいのですが、職場の直属の上司や先輩と一緒に受けるのも効果的だと考えています。上司や先輩は、自分が無意識に行っている「改善」を再認識できますし、また指示の「言語化」の重要性を改めて認識することもできると思います。

ここまでは会社側の視点に立って書いてきましたが、ここからは少し新入社員や就活生の視点で考えてみたいと思います。
先ほど、あなたに「新入社員にどんな人材に育って欲しいか?」という希望をお聞きしましたが、新入社員や就活生の立場になって考えるとどうでしょう。彼らはどんな会社を求めているでしょうか。
デジタルネイティブの時代に育ったZ世代の若者は、私たちが考えるよりずっとスキルアップに意欲的な人が多く、「この会社は果たして自分を成長させてくれるか?」「やりがいのある仕事をできる環境か」という点を、しっかりと見ています。
また残念ながらZ世代の離職率は高く、厚生労働省が令和6年に発表した新規大学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業)では、就職後3年以内の離職率は34.9%にものぼり、過去15年間で最も高い離職率となりました。
その離職理由のトップの一つとして「会社で自己成長を望めない」が挙がっています。『新入社員のための改善基礎研修』では、入社当初からトヨタ流の「改善の視点」のを理解することで、「仕事をよりよく、効率的に変化させる人」へと早期に成長させることができますが、これは、企業にとっても、スキルアップを求めるZ世代の若者にとっても非常に大きなメリットとなるはずです。

〈出典〉厚生労働省ウェブサイト
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html

もう一つ、「改善の視点」を理解する重要さは、今後のAI活用にも大きくつながっています。 いま世の中はAI活用の大転換期にあり、今後AIによる業務効率化が急速に進むはずです。しかしAIは使う人の能力次第であることは間違いなく、AIなどデジタル技術による業務効率化を進めるためにも、「改善・改革」の考え方やプロセス・手順を理解する社員を育成することは重要で、この研修はそうした意味でも有意義だと私は考えています。

最後に、いただいた質問にお答えして今回のコラムを終わりにしたいと思います。

A. 内定者から1~2年次の方を対象とした新入社員向け研修としておすすめします。中途採用の方や、3年目以降の方は仕事での経験が大きく異なるため、『仕事のカタ研修』や『業務効率化研修』がおすすめです。


A. どんな人でも、日常生活において何らかの改善はしているはずです。とくに就活では面接等で、学生時代に力を入れた「ガクチカ」や研究における改善内容について聞かれることも多く、改善に対する考え方自体は身についていると思いますので、本プログラムは全く問題なく理解していただける内容です。

ビジネススキルの一つであるロジカルシンキングは、新入社員研修にも広く取り入れられています。
『新入社員のための改善基礎研修』は、そのロジカルシンキング研修に代わる選択肢として位置づけられるものです。論理的思考を養う点は共通しつつ、日々の小さな業務にも即・当てはめられるのが特長の一つ。トヨタ流の「仕事の目的を問い、改善を積み重ねる姿勢」を考え方の軸とし、業務での実践を見据えているため、職場での即効性と持続的な成長の両立が期待できると思います。

第9回:「手順」ではなく「目的」から教える― 新人教育を変える新作『新入社員のための改善基礎研修』を講師が解説!

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは。講師の藤原です。新年度から半年近くが経過し、新入社員の皆さんも配属先に打ち解け、本格的な業務をスタートされている時期かと思います。今回はそんな新入社員の皆さんに向けた、新たな研修『新入社員のための改善基礎研修について解説したいと思います。

これまで私たちはさまざまな研修を展開する中で、新入社員向けには『社会人としての基礎づくり研修』を用意していました。しかし
「マナー的な研修以外の新入社員向け研修はないか」
「問題解決を会社全体で取り組みたいが、トヨタ流の研修で新入社員向けの前段階的なものがあれば取り入れたい」
「マインドセット研修でトヨタ流があれば知りたい」
などの問い合わせを多くいただき、『新入社員のための改善基礎研修』の開発を決めたという経緯があります。
本コラムでは、『新入社員のための改善基礎研修』について、2回にわたって解説していきます。

ここを読まれている皆さんは、新人研修について悩まれ、このコラムにたどりつかれている方がほとんどだと思います。
皆さんは、こんな悩みや疑問をお持ちではないでしょうか。

  • 新入社員の研修や教育にはどんな内容が最適なのか、わからない
  • そもそも、新入社員への教え方がよくわからない
  • 若手の先輩社員が後輩を上手く指導できない
  • 指示したことはできるが、それ以上のことができない者が多い
  • 自ら問題に気づき考動できる人材に育てたいが、どんな教育がよいか
  • 新入社員や若手の離職を減らしたいが、どうしていいかわからない

実はこのトヨタ流「新入社員のための改善基礎研修」には、その答えを紐解くカギがぎっしり詰まっています。その内容を少し、本コラムではご紹介したいと思います。

皆さんの会社では新入社員に、どんな順序で仕事を覚えていってもらっているでしょうか。

マナー研修で社会人としてのマナーをまず、身につけてもらう。
       ↓ 
OJTで会社のルールとともに簡単な業務手順を覚えてもらい、ある程度できるようになってから順次仕事をステップアップさせていく。

このような流れで教育している、という企業は多いのではないでしょうか。確かにこれは間違いではありません。

しかし、世の中の価値観はこの10年だけでも大きく変化し、それとともに若い世代の「働き方」や「生き方」に対する考え方もガラリと変わりました
私が教えている学生たちもそうですが、若い世代は「コスパ」や「タイパ」に非常にシビアであると同時に、「自分がいかに成長できるか」そして「自分が社会に何か貢献できているか」を、私たちが想像する以上に気に掛けています
情報収集能力も高い彼らはSNSなどのインターネットの情報を通じて、自分の費やした時間を「コスパ」や「タイパ」として評価し、自分にとってパフォーマンスが低いものは、あっさり切り捨ててしまう傾向にあります。会社の離職率が高まっている要因の一つもここにあります。
こうした状況下における現代の新入社員にも、実は「トヨタ流」の仕事の進め方や考え方は有効的で、効果を発揮します。

それはなぜか—。その理由の一つが、仕事に対する目的の理解です。

トヨタ流では、仕事は「手順」から覚えてもらうのではなく、「この仕事は誰のためなのか?」「この仕事は何のためなのか?」と、仕事の「目的」をしっかり理解するところからスタートします。

仕事への深い理解は仕事の習得を早めるだけでなく、仕事のモチベーションアップにも直結します。また、仕事に対する正しい理解とモチベーションアップは「自ら考える力」となり、それが小さくても「承認」という結果につながると、好循環が生まれ、仕事のやりがいや、嬉しさにつながっていくのです。

トヨタ流において、仕事の「目的」の理解は、仕事の基本中の基本です。

「トヨタ生産方式/TPS(Toyota Production System)」でも「仕事の目的を考える」ことは 基本的な思考方法やマインドセットの一つとして位置づけられ、入社した早期から「目的」を意識して仕事ができるように習慣化することで、本人はもちろん、トヨタ全体に大きなメリットを与えてきました。
社員一人ひとりが自分の仕事の目的を明確に理解して業務に取り組むことで、全体の生産効率は向上し、それは価値連鎖へとつながります。もちろん、会社への信頼感や帰属意識も強化されます。

そう、トヨタ流の考え方は、そもそも自分の仕事をどう理解するか、というところから始まっているのです。

次に、「目的」を考えて仕事をした場合の好事例をご紹介します。以前、私が他所で耳にした事例なのですが、物販店でのわかりやすいケースで、仕事の目的を理解することの重要性がよく伝わる内容です。

全国展開する物販店では、アルバイトの定着率が低かったそうです。
陳列マニュアルが細かく、覚えるのが大変で、ルールから外れるとすぐ指摘される環境だったとのこと。そこで「陳列の目的=お客様に商品の魅力を伝えること」と捉え直し、独自のアイデア陳列を許可した結果、アルバイトが工夫を競い、売上と定着率が改善したといいます。

まさにこの事例の成功点は、トヨタの考える仕事の基本と同じ、「目的」の理解です。
この事例でわかるように、「目的」を理解せず、方法やツールばかりを重視する「手段」のみで仕事を進めても仕事は思うような方向には進みません。
また、仕事ではどういう状態が「ゴール」かを定め、そこにプロセスを組み立てることが必要ですが、それを考えず「今目の前にある、やらなければいけないこと」だけをやっていては成功にはつながりません。

この『新入社員のための改善基礎研修』では、すぐに研修内容を仕事に生かせるのもポイントの一つですが、研修では仕事の「目的」を理解するための考え方を学び、即応用できるよう、自分事としての演習も行っています。

では、仕事の「目的」を考えるとき、どこに軸足を置いて考えるのが重要なのでしょうか。その答えを、トヨタでは「お客様視点で仕事の目的を考えることが重要」だとしています。
しかし、単に「お客様」といっても、トヨタが定義する「お客様」は目の前の客のことではありません。

「トヨタの指すお客様=自分の仕事における価値の提供先」のこと。エンドユーザーはもちろん、後工程に加え、さらにはステークホルダーまでを全てがお客様だと定義しています。

トヨタは1960年代にTPSの考え方を確立させたとき、生産現場で「後工程はお客様である」という考え方を打ち出しました。同じ社内であっても「後工程はお客様」という訳です。 
後工程の「お客様」がスムーズに仕事ができるよう、常に考え・改善するようにしたことで、トヨタは品質の向上とともに、生産性を格段に向上させてきました。
このTPSの初期の考え方をさらに拡大させたのが、先ほど説明した「お客様視点で仕事の目的を考えることが重要」だという訳です。

下のイラストは、新入社員が早期から「自分の仕事の目的は車を販売することではなく、お客様の安全で快適なカーライフをサポートすることだ」と気づき、改善マインドを持つことでモチベーションの向上と自己成長につながった、というトヨタ販売店様の一例です。

私たちを取り巻く社会環境の変化スピードはますます速まっています。こうした環境の変化が激しい中では、企業の中の一人ひとりが仕事の目的を考えて自ら動くことが必至となりますが、その大前提が、仕事の目的を知るということなのです。

今回のコラムのはじめに、現代の若い世代は「自分がいかに成長できるか」そして「自分が社会に何か貢献できているか」を重視していると書きましたが、『新入社員のための改善基礎研修』では、「自分の仕事の目的を理解する」ことで、「それぞれの立場の人にどんなメリットを生み出すか」を考える演習も行い、仕事の本質にまで切り込みます。
それを理解した上で、「改善マインド」を育成するための内容へと進んでいきます。

最後に、今回の解説のまとめとして、『新入社員のための改善基礎研修』で学ぶ、トヨタ流 仕事の基本を理解することで、新入社員がどんなスキルを習得できるかをご紹介しましょう。

①仕事の習得が早くなる
②自分の仕事が社会にどう貢献しているのかまで理解でき、仕事のモチベーションがアップする
③後工程を含めたお客様(価値の提供先)に対してより良いアウトプットを提供できるようになる
④仕事の目的に合わないムダを発見できるようになる
⑤目的を達成するためにより良い仕事の仕方・手法も考えることができるようになる

上記のスキルを習得することは、社内での小さな承認の積み重ねにもつながり、さらに仕事のやる気、そして仕事の嬉しさにつなげることができます。

『新入社員のための改善基礎研修』は「新入社員」と名が付いていますが、先輩の立場の若手社員が仕事の目的を理解していない場合や、新入社員への教え方に悩む若手の先輩社員にもおすすめです。こうした社員は、それまでの仕事を振り返ることができるだけでなく、後輩への指導の仕方も理解できると思います。また製造業以外の職種の受講はもちろん、製造と事務系など、全く違う部署同士で受講するパターンも可能です。気になる方は、ぜひお問い合わせください。

次回は、「新入社員は指示されたことしかできない。それ以上の結果を残せる人材に育って欲しい」などの悩みに『新入社員のための改善基礎研修』がどう応えるのか?
そして新入社員の考える力や、カイゼンマインドをどう養うのか、などについて解説します。10月上旬に公開予定です、ぜひお楽しみに!

第5回:新作研修「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」は「風土改革」・「人財育成」に直結する!

このたび内容をリニューアルした「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」を講師が解説します!

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

藤原:みなさんこんにちは、講師の藤原です。今回のコラムでは、リニューアルした「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」についてお話ししようと思います。

お陰さまで「問題解決研修」は人気の研修となり、多くの企業に採用していただいています。この研修では、トヨタ流の基本的な「問題解決」の考え方を「8つのステップ」を通して学びながら多角的な演習を行いますが、なぜトヨタが「問題解決」をここまで大切にしてきたか、そしてそれがトヨタの成長にどうつながったのかも深掘りし、お伝えしています。

また要望の多かった「問題解決研修をあらゆる業種・業態でも活用できるようにして欲しい」という声にお応えするため、それぞれの業態・業種に必要なポイントをおさえて「カイゼンサイクル」を学ぶことができるようになった点も大きなポイントです。ここでは簡単にトヨタ流「問題解決研修」ではどんなことを学んでいるかを説明しながら、トヨタ流の研修は何が違うのか? トヨタ流の研修なら何を体得することができるのか?を解説したいと思います。

上の「8つのステップ」はトヨタ流の問題解決法の一つとして広く知られ、今も世界中のトヨタで実践されています。ステップにおける考え方のコツ・秘訣までしっかり明文化(文章化)しています。これによって研修内容を職場で応用するときも、方向性を見間違うことなく問題解決につなげやすくなりました。一日間(7時間研修)では演習を多く織り込み、一人ひとり、個人の問題に当てはめた実践もしやすくなっています。

そしてこれは大きなポイントですが、トヨタ流「問題解決」は、ツールや手順を使うという「手法」ではなく「考え方」ということです。たとえば、思考の枠組みを考える「フレームワーク」の構築法や、論理的思考法ともいわれる「ロジカルシンキング」など、問題解決の手段と呼ばれるものは数多く存在します。もちろん、それらの手法を知ることは仕事を効率的に進めるために重要ですが、「一人ひとりが別々に」それを行って「その場、その場」で問題をクリアしたとしても、なかなか問題の根本を解決することにはつながらないのが実情です。また、同様の問題が再発しやすいというデメリットもあります。

これは医学的な「対症療法」と「原因療法」の違いにも似ています。「対症療法」は現れている症状を改善する治療法で、頭痛の際に鎮痛剤を飲むのはまさにこれ。根本の原因を取り除く訳ではありません。対して「原因療法」は病気の原因を取り除き、根治をめざす治療です。でももし頭痛の原因が深刻な病気だった場合、鎮痛剤でごまかし続けていたらどんなことになるか…。答えは火を見るより明らかですね。仕事も同じです。

またトヨタ流の「問題解決」は英語では、「Toyota Business Practice(トヨタ ビジネス プラクティス)/TBP」と表現します。直訳で考えれば「Toyota Problem Solutions(トヨタ プロブレム ソリューションズ」となりそうですが、「ソリューションズ(解決・解答)」を使わず「プラクティス(実践)」としているところからも、トヨタのこだわりを感じるように思います。

問題は解決したら再発させず、恒久的な改善につなげることが重要ですが、まさにトヨタ流「問題解決」は、その場をしのぐ手法や対症療法ではなく、原因を探り、日常の行動に実践を落とし込んで根本から解決する「原因療法」だといえます。

もう一つ、トヨタと一般企業の大きな違いに、カイゼンやその考え方などの研修が教育体系にしっかり組み込まれているという点があります。

トヨタでは管理職から新入社員に至るまで、階層別の教育体系が完備されています。こうした研修を通じて全ての従業員が考え方や手順に必要な「共通言語」を理解していくため、仕事はスピーディーで間違いも少なくなり、めざす方向性のブレも小さくなります。

たとえばトヨタの社内では、3現主義=「現地」「現物」「現実」や、「なぜなぜ5回」などの共通言語がありますが、何か問題が起きた際「3現主義は守られているか?」と言われるだけで、その指摘の背景にあるものまで瞬時に理解することができます。残念ながらそれでも間違いは起きますが、トヨタの右肩上がりの成長の持続は、間違いやブレを最小限でとどめていることに結びつくのは間違いありません。

さらにこうした考え方や教育体系は、トヨタ本体に限らず関連企業にも浸透。グループ全体で「共通言語を体得」することでトヨタ系企業の風土・体質を向上させ、グループパワーとしての莫大な強みにつなげているのです。

これは私見ですが、トヨタがこだわっている問題解決のポイントは以下の5つだと思います。

企業の人事部の方から、「自社にトヨタ流「問題解決」を取り入れ、効果を出すことはできるでしょうか?」という質問をいただくことがありますが、答えは「YES」です。あらゆる業種・業態で可能です。この事例などは、別の機会に詳しくお話ししたいと思います。

また、「問題解決研修を受けてみたいが、新人や中間管理職など、どの層に研修を受講してもらうのがよいか?」という質問をいただくことがあります。そんなときは「できればすべての層に受講していただき、社内で共通認識をもっていただくのが効率的」だとお答えしています。

重要なのは組織全体で問題解決を実践する職場風土を醸成するため、それに必要な「共通言語」を多く構築していくかです。仕事のすすめ方に、「共通の認識=共通言語」があれば、ブレのないスピーディーなやりとりができますし、ヌケモレやミスに気づき、早期解決することができます。

そして問題解決の考え方が定着すれば、上司・先輩から部下・後輩へとつなげていく社内教育が可能になり、それはトヨタでも「教え・教えられる」文化として継承・実践されています。

「問題解決研修 基礎編 ~8ステップと考え方~」を実際に受講した方からは、こんなコメントを頂いています。

人材育成や風土改革を推進する企業は多くありますが、私はそのポイントになるのは、実は「考え方の習慣化」だと思っています。

問題解決に向け、一つひとつ、手順を考えながら答えを求めるのは慣れるまでは面倒に思えますが、習慣になれば条件反射的に問題解決の考え方や手順が湧いてくるようになります。そして、それが体得できれば上流から下流へ指導できるというグッドサイクルへとつながります。

また、共通言語を使った仕事の進め方は、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる「心理的安全性」にもつながると、私は確信しています。

ご質問やご相談だけでも構いません。お話を聞いた上で、最適な研修プランをご提案いたします。まずはお気軽にお問合せください。