株式会社トヨタエンタプライズ

第7回:トヨタ流 業務効率化のこだわりは「目的の明確化」。効率化もDX推進も成功させたいなら、「根本」に立ち返れ!

カテゴリー:

業務効率化

キーワード:

DX研修人材育成課題解決風土改革

2025.02.07

PROFILE

藤原 慎太郎(ふじはら しんたろう
国立大学法人名古屋工業大学 創造工学教育推進センター 特任教授
【略歴】1982年 トヨタ自動車株式会社 入社
製造・技術部門にて現場の経験を積んだ後、カイゼンの本流であるTQM(Total Quality Management) 推進部(業務品質改善部)にて室長・主査を務める。トヨタ流マネジメントやトヨタ流カイゼン/価値創造の良さを、トヨタ社内のみならず広く世間に伝えたいという思いから、トヨタ自動車を退職後、幅広い分野で活躍。
現在は企業や教育機関にて、それぞれの特性に合わせた「トヨタ流カイゼン」教育の指導者として、「カイゼン」「問題解決」「マネジメント」等の研修にも登壇し、活躍の場を広げる。

企業が持続的な成長をするために「業務効率化」は、必須課題です。しかし、「忙しすぎて業務の効率化に手を付けられない」「業務の効率化の進め方がわからない 」ムダを見つける方法が今一つわからない」「改善・改革のアイデアがなかなか出てこない」「組織で業務の効率化に取り組んだものの、成果が実感できない」と、悩む企業は多いはずです。

藤原:皆さんこんにちは。講師の藤原です。先回のコラムでは、皆さんから質問や相談の多い「問題解決研修」について詳しく解説しましたが、今回解説する「業務効率化研修」も「問題解決研修」同様にご質問や相談の多い研修の一つです。 そこでここでは改めて「トヨタ流の業務効率化」とは?をひも解くとともに、業務効率化の根本的な考え方や「業務効率化研修」と「問題解決研修」の違い、さらに現代の業務効率化には欠かせない「DX推進」の正しい進め方なども解説していきます。

はじめに、「問題解決研修」と「業務効率化研修」の違いから説明しましょう。私も担当しているトヨタ流 問題解決研修」では、まず「何が問題なのか」を明確化することから始めます。その上でその問題の陰にある「見えていない課題」や「表向きの原因とは異なる真因」を発見する方法などを学ぶ訳です。 この際の「問題」とされる対象は幅広く汎用的で、問題解決法を習得することで、社内におけるさまざまな問題に応用することができます。研修は8つのステップに沿って「PDCAサイクル全体」で演習を行いながら進めていくのも特徴です。

これに対して「業務効率化研修」では、すでに問題が「業務を効率化できない」という点に絞られているため、研修もそこに特化し、業務内でのプロセスのムダを見つけ、改善・改革していく、という具体的な手法や考え方を学びます。 PDCAでいえば「P」の部分(問題の発見と計画づくり)に的を絞った内容になります。

「トヨタ流 業務効率化研修」とは何かを説明するにあたり、少し裏話的な内容になりますが、この研修が生まれた背景について少しだけお話したいと思います。

私がかつてトヨタのTQM(Total Quality Management)推進部に在籍していた2000年ごろのことです。当時のトヨタは大変忙しいにもかかわらず、人員や労働時間などのリソースを急に増やすことができず、全社的な業務改廃=業務効率化を必要としていました。私は業務改廃プロジェクトにTQM推進部として関わっていましたが、プロジェクトでは「トヨタ生産方式(TPS)」の考え方に基づいて「ムダ・ムリ・ムラ」を徹底的に排除して業務効率改善を行い、生産性や品質向上に大きく寄与しました。

その後、私はトヨタを退職しましたが、当時の経験を生かして開発したのがこの「トヨタ流 業務改善研修」という訳です。実際の研修では、TPSの基本的な考え方に時代や環境の変化、ニーズに合わせた内容もプラスして、皆さんに解説、演習などを行います。

この研修に限らず、トヨタ流の研修全般で受ける質問ですが、皆さんが気にされるのは、製造業以外の業種でこの研修を生かすことができるか」という点です。

答えは、もちろん可能です。業務改善研修は製造業以外のサービスや営業・販売・事務系など、幅広い業種に対応できるようアレンジされています。例えば、工程や手順などの「業務プロセス」を見える化することは業務効率化において必須ですが、製造業以外では、工程が「担当者の頭の中」にしかないことも多くあります。研修ではそれをいかに「見える化して共有するか」という手法も学びながら、チームとして議論する演習なども行います。研修では下図のようなステップを踏みながら、改善すべき点の洗い出しを行います。

ではここからはDX推進(デジタル技術活用)についても考えていきたいと思います。現代における業務効率化において、DX推進は欠かすことができません。しかし「IT」や「AI」など目新しい技術が出る度に「IT化」「AIの活用」が目的になってしまっている企業を多く目にします。ここでは「そもそも業務効率化とは何か?」を改めて考えながら、DX推進を成功させるまでの道のりについて考察してみます。

きっとここを読んでいらっしゃる皆さんは、業務効率化やDX推進について何らかの悩みをお持ちの方だと思いますが、あなたは「業務効率化とは何か?」を端的に答えられますか?

では、その何らかの目的とは何でしょうか。私は企業が業務効率化を推進する目的は大きく、次の5つだと考えています。①会社としての競争力を上げる➁ 新規業務や重点課題を進められるようにするために時間をつくる③ 残業時間や業務負荷を低減する④メンバーの改善力を上げる(人材育成)⑤メンバーのモチベーションを上げる

多くの企業はこのどれか、もしくはいくつか複数の目的のために「業務を効率化したい」と考えているはずですが、これらの目的を達成するにはそれぞれの目的に合わせた進め方をすることが重要で、研修ではその詳細を学びます。「トヨタ流 業務効率化研修」が最もこだわっているのは、「目的」の明確化だといっても過言ではありません。DX推進も実はこれと同じで、目的のないDX推進はまったく意味を持たないものになってしまうのです。

私が実際に話を伺ったある企業では、同業他社との競争力強化を目的として、全社でデジタル技術を活用したDXへの取組みを開始してはみたものの、「競争力向上」という本来の目的において本当に効果的なのか?という大きな疑問をお持ちでした。「競争力向上のためのデジタル技術活用」ではなく、「デジタル技術を使うこと」自体が目的となってしまい、様々な取組みをしても、思ったような効果が感じられなかったのだと思います。

DXは技術そのものではなく、有効的な手段に過ぎません。大切なのは、手段(DX)を目的のために上手く活用することです。目的は何か、その根本に立ち返ってDXを推進することが、成功への近道となるのです。

上ではわかりやすく簡単な例を紹介しましたが、誰もが名を知る大企業でもこうした「DX迷走」は実際に起こっています。研修ではこうした業務効率化やDX推進における

●「目的」や「手段」の取り間違いに陥らないポイントなどを解説するとともに

●どんな場面でどんなデジタル技術が使用できるか

●実際の活用事例なども紹介します。

いわばコンサル的なアドバイスも含めながら、研修を受けられるのも「トヨタ流 業務効率化研修」の特長の一つです。とは言っても、私たちが研修の目標にしているのは、コンサル的な役割を果たすことではなく、研修を通じて、その企業が継続的に自走していただく仕組みづくりや、最適解を見つけるお手伝いすることです。

ここで研修を実際に受けられた方の感想を少しご紹介します。

●現業に当てはめて考えられる研修を久しぶりに受けた。研修内のグループワークで、他部署の意見を聞けたのも有意義だった。

●実戦的な資料で、すぐ活用したいと思えた。また、共感できる課題が多かったのもよかった。

●資料一つひとつに意味があり、何を目的にその改善を行うのか理解しやすかった。

●デジタル推進ありきで仕事の改善を考えていたが、そこに廃止や延期の判断が必要な場合もあると気づけた。

最後に質問です。いま、業務効率化を目指しているあなたの会社は、下の3つに当てはまっていませんか?

●業務効率化のはっきりした計画がない

●業務効率化の目的や目標があいまい

●業務効率化の責任者がいない

もしあてはまっていると感じられた方や現在の取組みをカイゼンしたい方、これから業務効率化を推進したい方も、どうぞお気軽にご相談ください!

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