株式会社トヨタエンタプライズ

【対談インタビュー】交通安全ツール開発者が語る 交通事故ゼロへの思い

2026.07.29

企業における交通安全教育の重要性が高まるなか、トヨタエンタプライズとJAFメディアワークスは、「交通事故をなくしたい」という共通の想いのもと、交通安全教育に関するコラボレーション企画を進めています。

第1弾では、トヨタエンタプライズが販売代理店を務めるドライブシミュレーター「SAFETY DRIVING TRAINER」と、JAFメディアワークスが提供する交通安全eラーニング「JAF交通安全トレーニング」の相互体験を実施しました。

第2弾となる今回は、それぞれのツール開発に携わるお二人をお招きし、開発の背景や教材に込めた想い、交通事故ゼロに向けたアプローチについて伺いました。

登壇者紹介

株式会社PRIDIST 高橋氏
SAFETY DRIVING TRAINERの開発を担当。教育用システムや各種シミュレーターの開発に携わる。

カーマクション合同会社 園部氏
JAF交通安全トレーニングの教材制作を担当。元JAF交通安全インストラクターとして、企業・学校・一般ドライバー向けの講習やカリキュラム開発に従事。

危険を「自分ごと」として体験する
SAFETY DRIVING TRAINERに込めた想い

(高橋氏)株式会社PRIDISTでは、鉄道・航空・バス運転士向けの訓練シミュレーターをはじめ、歩行者・自転車・自動車の交通安全教育シミュレーター、医療福祉向けの機能訓練システムなど、幅広い教育用システムを開発しています。

その中でも、交通安全教育シミュレーターの開発において同社が大切にしているのは、危険を予測する力を身につけることです。

交通場面では、自分も相手も交通ルールを守っているにもかかわらず、「危ない」「怖い」と感じる場面があります。事故を減らすためには、そうした危険な場面を事前に予測し、回避する意識を高めることが欠かせません。

そこで同社は、まず歩行者の視点で交通安全を学べるシミュレーターを開発しました。交通弱者である歩行者の立場から、実際には経験すべきではない危険をシミュレーター上で体験することで、危険予測を「自分ごと」として学べるようにしたのです。

その後、行政や警察関係者からの要望を受け、自転車、自動車へとシミュレーターの領域を拡大。歩行者・自転車・自動車の3つのシステムを1台のパソコンに搭載し、タブレットで簡単に切り替えられる仕組みを開発しました。

“危険場面をシミュレーター上で体験することで、事故を「自分ごと」として考えるきっかけをつくります。”

“危険場面をシミュレーター上で体験することで、事故を「自分ごと」として考えるきっかけをつくります。”

よりリアルな体験を追求して生まれた新しいシミュレーター

一方で、自動車シミュレーターには大きな課題もありました。

実際の運転では、車の揺れや、曲がる・止まる際の重力を体感します。しかし、一般的なシミュレーターではそうした身体感覚が乏しく、酔いやすいという問題がありました。また、持ち運びやすさを重視してゲーム用ハンドルを使用していたため、「ゲームのように見えてしまう」「本来学んでほしい危険予測に集中しづらい」といった課題もありました。

こうした課題を解決するために開発されたのが、SAFETY DRIVING TRAINERです。

体験者のハンドル操作やペダル操作に合わせてハンドルやシートが動き、段差や縁石、坂道などの走行感覚も再現。さらに、ハンドルやシートベルトには実車と同じ部品を使用し、シートポジションも調整できるようにすることで、より本物に近い運転感覚を実現しました。

“実車に近い操作感で、危険場面を体験できるSAFETY DRIVING TRAINER”

“実車に近い操作感で、危険場面を体験できるSAFETY DRIVING TRAINER”

危険予測・運転操作・法令遵守を客観的に振り返る

SAFETY DRIVING TRAINERの大きな特長は、危険予測の意識を高めるだけでなく、体験後に客観的なフィードバックを得られる点です。

体験終了後には、危険予測・運転操作・法令遵守といった項目ごとに評価やアドバイスが提示されます。違反、事故、ヒヤリハットの場面はキャプチャーと数値で確認でき、自分が見落としがちな注意箇所や危険な行動を振り返ることができます。

また、管理者向けには、体験者全体のログを集計する機能も用意されています。企業では、部署別・営業所別・エリア別に事故や違反の傾向を把握でき、安全管理に役立てることが可能です。

“事故やヒヤリハットの場面を数値や画像で確認し、見落としやすい危険を振り返ります。”

“事故やヒヤリハットの場面を数値や画像で確認し、見落としやすい危険を振り返ります。”

SAFETY DRIVING TRAINERには、実車訓練では再現しにくいリアルなヒヤリハット体験と、客観的な評価を通じて、危険や事故を他人ごとではなく自分ごととして捉えてほしいという想いが込められています。

また、一度体験して無事故だったから安心というわけではありません。年齢とともに認知・判断・反応速度は変化し、交通ルールや車の技術も日々変わっていきます。だからこそ、定期的に体験し、自分自身の変化や運転習慣を見直すことが大切です。

継続的な学びで安全意識を育てる
JAF交通安全トレーニング開発の背景

(園部氏)JAFと聞くと、ロードサービスを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、交通安全講習会、実技講習会、交通安全コンテンツの制作、交通安全に関する各種調査など、交通安全活動にも積極的に取り組んでいます。

その背景には、JAFの設立理念があります。JAFは1963年、モータリゼーションの進展に伴い、自動車ユーザーの安全確保、利便性向上、故障時の支援、交通環境の改善等を目的として設立されました。

ロードサービスによってトラブル時に支援するだけでなく、そもそも事故やトラブルを起こさないための取り組みを行うことも重要です。JAF交通安全トレーニングは、そうした交通安全活動の一環として開発されました。

企業活動に関わる交通事故を減らすために

JAF交通安全トレーニング、通称「JAFトレ」は、JAFの交通安全啓発ノウハウを活かした教材を毎月eラーニング形式で配信し、その学習結果を管理できる法人向けサービスです。

開発の背景には、企業活動に関わる交通事故が多いという課題があります。

2024年の通行目的別交通事故件数では、約6割が私用、約2割が業務、約2割弱が通勤に関わる事故でした。つまり、業務と通勤を合わせると、企業活動に関わる交通事故が全体の約4割を占めることになります。

さらに近年では、企業車両の危険運転がドライブレコーダーやSNSで拡散され、企業イメージに大きな影響を与えるケースも増えています。事故を起こさないことはもちろん、企業リスクを低減する意味でも、継続的な交通安全教育の重要性が高まっています。

“企業活動に関わる交通事故が全体の約4割を占める”

“企業活動に関わる交通事故が全体の約4割を占める”

JAFトレが重視する5つのポイント

JAF交通安全トレーニングの開発では、次の5つのポイントを重視しています。

継続する
交通安全教育を一度きりで終わらせず、毎月学習する仕組みにする。

知識をつける
交通ルールや危険予測に関する知識を、わかりやすく身につける。

言語化させる
受講者自身に考えを書いてもらうことで、理解を深める。

促進する
管理者が受講状況を把握し、学習を促す仕組みを整える。

管理する
受講率だけでなく、受講者がどのように考え、どのようなコメントをしているかまで確認できるようにする。

特に力を入れたのが「管理する」機能です。受講状況を一覧で確認できるだけでなく、受講者の自由記述コメントまで把握できるため、企業の安全管理者は、従業員の理解度や意識の傾向を具体的に見ることができます。

“毎月の学習と管理機能により、受講者と管理者の双方から交通安全教育をサポートします。”

“毎月の学習と管理機能により、受講者と管理者の双方から交通安全教育をサポートします。”

「よくある場面」だからこそ、自分ごとになる

JAFトレの教材では、実写映像や画像、音声、テキストを組み合わせ、実際に起こりやすい交通場面を再現しています。

たとえば、営業車で取引先へ向かう途中、渋滞を避けるために住宅街の抜け道を使う場面。多くのドライバーにとって「つい、やってしまいそう」と感じるシチュエーションです。

しかしその結果、見通しの悪い交差点で自転車と接触してしまいます。教材では、事故が起きた場面を見せるだけでなく、なぜ抜け道を使う選択が危険につながったのか、見通しの悪い交差点ではどこに注意すべきだったのかを掘り下げて学べる構成になっています。

また、子どもとの接触事故をテーマにした教材では、小学生の事故が多い時間帯などをグラフや数値で示し、なぜその時間帯に注意が必要なのかを理解しやすくしています。

JAFトレでは、教材づくりにおいて「普段の運転に近い場面」を再現することを大切にしています。

交通安全教育は、どこか自分とは違う世界の話のように聞こえてしまうことがあります。だからこそ、普段皆さんが運転しているような環境を再現し、「これは自分のことかもしれない」と感じてもらえる内容を意識しています。

“日常の運転で起こり得る場面だからこそ、危険を身近なものとして捉えることができます。”

“日常の運転で起こり得る場面だからこそ、危険を身近なものとして捉えることができます。”

導入企業では交通事故の第一当事者となる件数の減少にも寄与

JAFトレを導入した、高速道路の巡回・安全管理を担う企業の事例をご紹介します。

この企業では、従来は部署単位で交通安全教育を行っており、教育内容にばらつきがありました。そこで、全社で統一した交通安全教育を実施するためにJAFトレを導入しました。

従業員には「従業員を守るために導入したeラーニング」であることを周知し、強制ではなく個人の裁量で取り組んでもらう形で活用しました。

その結果、導入から9か月後には、交通事故の第一当事者となる件数が前年同期比で3分の1に減少。さらに、教育資料作成にかかる業務負荷の軽減にもつながったとのお言葉をいただきました。

共通するキーワードは「自分ごと化」

(事務局)両者の取り組みは、アプローチこそ異なります。

SAFETY DRIVING TRAINERは、リアルな運転体験とヒヤリハット体験を通じて、安全意識を高めるツールです。

一方、JAF交通安全トレーニングは、継続的なeラーニングによって、日常的に交通安全への意識を持ち続けるためのツールです。

しかし、両者に共通しているのは、交通安全を「自分ごと」として捉えてもらうという考え方です。

交通安全教育は、ともすると「自分には関係ない」「知っているつもり」と受け止められてしまいがちです。だからこそ、日常で起こり得る場面を再現し、自分の運転を振り返るきっかけをつくることが重要です。

高橋氏が大切にしているのは、体験者にシミュレーターを単なる「ゲーム」としてではなく、「自分の運転を振り返る機会」として受け止めてもらうことです。そのために、実車に近い操作感や、日常で起こり得る交通場面の再現にこだわっています。

園部氏もまた、教材を通じて「これは自分にも関係がある」と感じてもらえるよう、普段の運転に近いリアルな場面づくりを大切にしています。

“体験と学習、それぞれのアプローチから交通安全を「自分ごと」にする2つのツール。”

“体験と学習、それぞれのアプローチから交通安全を「自分ごと」にする2つのツール。”

交通事故ゼロに向けて

交通事故を減らすためには、ルールを知るだけでは不十分です。

危険を予測し、自分の運転習慣を振り返り、継続的に安全意識を持ち続けることが求められます。

SAFETY DRIVING TRAINERとJAF交通安全トレーニングは、それぞれ異なる方法でその課題に向き合っています。

リアルな体験を通じて気づきを得ること。
継続的な学習を通じて意識を保ち続けること。
そして何より、交通安全を「他人ごと」ではなく「自分ごと」として捉えること。

交通事故ゼロの実現に向けて、両ツールは企業の安全教育を支え、一人ひとりが安全について考え続けるきっかけを生み出していきます。

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